高速カメラを5台連結

 開発したシステムの肝は、被写体を複数台のカメラがバトンタッチしながらリレー方式で撮影する技術にある。

 飛距離を競うスキージャンプの場合(飛行や着地の姿勢の美しさなど「飛型」も採点される)、ジャンプ台を踏み切る直前から空中姿勢に移行するまでのフォームが飛距離を左右するため、その分析が重要になる。このように高速で横方向に移動する被写体を真横から捉えるためには、複数台のカメラを並べて撮影する必要があるが、実現には工夫が必要になる。

カスケードハイスピードカメラシステムの概要。SEMICON Japan 2018に掲げた説明パネル
カスケードハイスピードカメラシステムの概要。SEMICON Japan 2018に掲げた説明パネル
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 スポーツに対応した高速カメラでは撮影フレーム数が毎秒数百フレーム/秒(fps)と多いため、撮影開始を合図するトリガー信号で全部のカメラがスタートしてしまうと、後段のカメラでは搭載するメモリー容量が一杯になってしまい、選手が通過する肝心のシーンを撮影できない問題が起きたりする。もちろん、メモリーを追加したり、外付けのHDDを接続するなどの策はあるが、それではコストが高くなってしまう。

 そこで仰木教授とナノテックは、最初のカメラにトリガー信号を入れた後、所定の時間が経過した後に次のカメラに同信号をリレー式に入れるといったことを、ソフトウエアで制御できるシステムを開発した。ジャンパーが通過する速度は時速90km程度なので、1台のカメラの撮影範囲が決まれば、それぞれのカメラにトリガー信号を入れる時間が決まる。

 カスケードハイスピードカメラシステムは、640×480ドットの映像を最大373fpsで撮影できる小型カメラユニットと、撮影スタートのトリガー信号を生成するユニット、撮影した映像を処理して再生するパソコンで構成される。電力はPoE、つまりEthernet経由で供給する。小型カメラは海外メーカー製の市販品で、SEMICON Japanではカメラと電源部などを収納したハウジングを5台連結したシステムを展示した。

カスケードハイスピードカメラシステムの内部。640×480ドットの映像を最大373fpsで撮影できる市販のカメラを採用している
カスケードハイスピードカメラシステムの内部。640×480ドットの映像を最大373fpsで撮影できる市販のカメラを採用している
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 設置場所にもよるが、1台のカメラで10m程度の範囲を撮影できる。最大16台を接続することが可能という。カメラをハウジングに収納しているため、スキー場など寒冷地での耐環境性や防水性能を有する。

「横100mの映像を作りたい」

 現在はシステムを開発した段階で、今後、スキージャンプの大会に設置して撮影を実施し、チューニングをしていく予定。「カスケードハイスピードカメラシステムを現場に設置するには、あらかじめケーブルなどをはわせる必要などがある。設置にかかる準備などを考慮すると、現実的には2019年のサマージャンプ大会でテストすることになりそうだ」(仰木氏)。

 今後は水泳の飛び込み競技や陸上の100m走などにも展開したい考え。「100m走を真横から撮影した横100mの映像を作るのが目標」と仰木氏は“夢”を語る。