学校一丸となって箱根駅伝出場を目指す

まず、「慶應箱根駅伝プロジェクト」が立ち上がった経緯を教えてください。

保科 慶應義塾大学競走部 長距離ブロックは、箱根駅伝の第1回大会に出場し、第13回大会(1932年)には総合優勝を果たすなどの実績を持っています。しかし次第に参加校が増えていったことや、強化校の増加に伴って出場機会が減り、第70回大会(1994年)を最後に出場資格は得られていません。

 ただ慶應の競走部は、短距離ブロックでは多くの実績を挙げているので、OB会から「長距離ブロックの復活も実現させよう」という声が上がるようになっていったんです。ちょうど2017年に競走部が創部100周年を迎えたこともあり「慶應箱根駅伝プロジェクト」がスタートしました。私自身もこのプロジェクトの一環として、2017年4月から長距離ブロックのコーチに就任しています。

慶應箱根駅伝プロジェクトではどのような取り組みをしているのでしょうか。

保科 まずは「トレーナーとメディカルサポートの充実」があります。これまで長距離ブロックの部員たちはフィジカル部分でのサポートがあまりなかったので、外部からトレーナーの方に来ていただき、選手のコンディションの状況を把握できるような体制を整えています。

 また、大学内にあるスポーツ医学研究所センターとも連携して定期的にメディカルチェックを受け、最大酸素摂取量(VO2 max)や体脂肪、血液検査なども行っていますし、栄養士の方による栄養指導なども導入しています。その他に、夏に強化合宿も実施するようになりましたし、今後は合宿所の環境改善もしていきたいと考えています。

 こうしたプロジェクトの運営は、慶應義塾大学SFC研究所に設立した「ランニングデザイン・ラボ」が中心になって進めています。

慶應義塾大学競走部 ⻑距離ブロックヘッドコーチ/慶應義塾大学 大学院 政策・メディア 研究科/システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師の保科光作氏。自身も陸上競技選手として活躍し、日本体育大学では1年生の頃から4大会連続で箱根駅伝に出場。卒業後は日清食品に入社してニューイヤー駅伝優勝などを経験。現役引退後、日本体育大学、日清食品で指導者を経験し、2017年より現職
慶應義塾大学競走部 ⻑距離ブロックヘッドコーチ/慶應義塾大学 大学院 政策・メディア 研究科/システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師の保科光作氏。自身も陸上競技選手として活躍し、日本体育大学では1年生の頃から4大会連続で箱根駅伝に出場。卒業後は日清食品に入社してニューイヤー駅伝優勝などを経験。現役引退後、日本体育大学、日清食品で指導者を経験し、2017年より現職
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神武 慶應義塾大学大学院のシステムデザイン・マネジメント研究科(慶應SDM)にはもともと「スポーツシステムデザイン・マネジメントラボ」というラボがありました。こちらのラボはスポーツの価値向上やスポーツを活用した社会課題解決などを目指したもので私が代表を務めています。同じ大学内で同様にスポーツを取り扱うことになるので、せっかくならば2つのラボが連携しようということで、協力して長距離ブロックの競技力向上を図っていますし、私もランニングデザイン・ラボのメンバーに加わっています。

保科 ランニングデザイン・ラボは、長距離走競技や駅伝競技のあり方、効果的なトレーニング方法の開発・発見、検証など、ランニングに特化したデザインを行うラボです。私自身は、駅伝とチームワークの関係に関する研究をしています。大学駅伝で勝つためにはチームワークが必要ということはよく言われますが、具体的に駅伝チームに焦点を当てた研究は行われていません。そこで私は、チームを強くするためにはどのように集団を機能させることが大切なのか、個人の行動の変化がチームにどのような影響を与えるのかといったことを研究し、効果的なコーチングに結びつけたいと考えています。