PR

 「現在情報」とは、競合の動向、自社の需要家獲得の効率、高利益需要家など競争環境における社内外の情報のほか、業務負荷、モチベーションといった部門ごとの現状である。

 経営者に、現在の競争環境における有利・不利、守るべき需要家、業務効率などを把握してもらうための情報だ。業界のニュースなどはここで伝えることになるだろう。

 また、経営者は社内の様子をつぶさに観察できる立場にないことも多く、何らかの声が上がってこない限り、現場の体力、気力、モチベーションは維持されていると思いがちだ。それぞれの部門・部署の社内状況については具体的な事例を挙げながら、どのような現状であるかを説明し、どのような解決方法をとり得るかをメリット、デメリットを交えながら示す必要がある。

競合情報から自社の「現在」を知る
競合情報から自社の「現在」を知る
現在情報の例1 競合の前年度比成長度合い(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

「未来」はクリエイティブに、経営者を刺激せよ

 時折「経営者が現場のことを考えてくれない」という現場の嘆きを聞くことがある。だが、そもそも現場の状況を経営者に伝えていないという現場の態度に問題があるケースも少なくない。

 「営業部門が需要家受けを狙って新しい料金メニューを作ったために、顧客管理部門の負荷が大きくなってしまった」といった情報は、因果関係も明らかにした上で、きちんと報告すべきである。

需要家情報も重要な「現在」の姿
需要家情報も重要な「現在」の姿
現在情報の例2 自社の需要家ポートフォリオ(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 「未来情報」は、今後、積極的に獲得していくべき需要家や、とるべき営業戦略などの指針となる情報だ。今後も成長が続くのか、それとも限界が来るのか、またJEPXの高騰予測やその根拠となる燃料価格の予測などもこれに属する。自社の企業の分析、競合との戦い方、今後の営業戦略はできるだけ具体的に記載することが望ましい。

戦略計画ツールとしてSWOT分析などが有効
戦略計画ツールとしてSWOT分析などが有効
未来情報の例1 競合A社のSWOT分析(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 未来情報は、経営者の期待が極めて高い。もっとも、未来を想定した記述となるため、過去、現在よりも情報精度に対する担当者の自信は低いはずだ。

 しかし、ここでは電気事業の担当者として電力業界にアンテナを張っている立場から、主観寄りであっても根拠を示しながら伝えることが肝要だ。ここは、クリエイティブな思考で経営者の頭脳を十分に活性化させることが重要な役割であるから、保守的な意見よりも創造的な意見を恐れずに提案しよう。ただ、その場合、「個人的な見解」という前置きは忘れないほうがいいかもしれない。

戦略から「未来」の姿を描く
戦略から「未来」の姿を描く
未来情報の例2 自社の進むべき方向性(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 以上が、一般的な事業レポートの内容であるが、これら過去情報、現在情報、未来情報を羅列しても多忙な経営者に読んでもらえるとは限らない。そこで、1ページに収まるサマリーを作成することを推奨する。がわかりやすく、見やすいビジュアルであることが重要だ。経営者に「レポートも読みたい」と思わせるサマリーを作れれば、事業レポートは半分完成したようなものだ。

「過去」「現在」「未来」を一覧
「過去」「現在」「未来」を一覧
全体情報サマリーの例(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 最後に、事業レポートを作成するため情報源を紹介しておこう。

多様な情報をたぐり寄せる
多様な情報をたぐり寄せる
事業レポート作成のための情報源の例(出所:著者作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 事業レポートは新電力の危機や機会を正しく伝えるものである。分析的で論理的、そして魅力的な事業レポートは経営者の判断を助ける。新電力を大きく発展させる強力なツールになる。

村谷 敬(むらたに・たかし) 村谷法務行政書士事務所・所長
2008年に行政書士として太陽光・風力発電の建設手続きに関与したのを契機に電力の世界へ。エナリスで需給管理業務を極めた後、エプコにて電力小売事業部長として新電力事業を運営。その後、行政書士事務所を立ち上げ、新電力や自治体新電力へのコンサルティングも手がける。