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本記事は、情報処理学会発行の学会誌『情報処理』Vol.57, No.8に掲載されたものの抜粋です。全文を閲覧するには情報処理学会の会員登録が必要です。会員登録や全文の閲覧に関してはこちらから(情報処理学会のホームページへのリンク)

情報処理がスポーツに果たす役割

 2019年のラグビーワールドカップや、2020年の東京オリンピックなどのビッグイベントの日本開催を契機として、スポーツへの関心が高まっている。一方、近年のスポーツ分野における情報処理技術が果たす役割は、スポーツ動作解析をはじめとしてゲームの戦略分析やコーチング分野などにも広がりを見せている。それらは、トップアスリートの競技力向上に資するだけでなく、最近のスマートフォンによるランニングアプリに見られるような一般人の健康スポーツにも広がっている。スポーツを支える情報処理技術には、センサ技術、映像処理技術、バイオメカニクス、データマイニング、通信技術などがある。特に、近年の映像処理技術とセンサ技術の進展は、スポーツ科学研究のみならず、データに裏打ちされた高度なゲーム戦略をベースとした戦いなど、スポーツ競技の現場においても新たな情報処理技術の導入につながっている。

 スポーツ映像の利用に関しては、これまでにもサッカーやバレーボールなどの球技スポーツを中心に広く用いられてきたが、撮影した映像をそのまま目で見て大雑把な状況把握を行うなど、限られた活用しかされていないのが現状である。一方、近年の高精細かつ高フレームレートのビデオカメラの普及と高度な映像処理技術の進展を背景として、スポーツ映像処理技術の高度化が進んでいる。特に、球技スポーツの映像処理では、ビデオ映像から選手やボールの位置を自動検出し、フィールド座標上での3次元位置を求める技術が進展している。また、これらの位置情報から、プレイ内容の決定や選手の身体パフォーマンスの評価、戦略分析なども検討されている。

 また、GPSセンサや3次元角度・加速度センサ等のセンサ技術に関しては、センサの小型化、通信機能の搭載を背景として、近年スポーツ分野で広く用いられるようになった。たとえば、サッカー競技において、GPSセンサを用いて選手位置を測定する試みや、スマートフォン内のセンサを用いて走行コースや距離を競技者へ提供するランニングアプリが商品化されている。センサを用いる方法の利点は、リアルタイムにスポーツ動作を測定できる点であり、センサ技術とデータ通信技術を融合させることにより、競技者の動作を測定・分析し、分析結果に基づいて決定された指示を競技者へフィードバックする遠隔自動コーチングが可能な状況になっている。

 本稿では、球技スポーツを対象としたスポーツ映像処理技術とインラインスケートを対象とした遠隔自動コーチングシステムに関して、技術の現状を解説するとともに、スポーツ情報処理における課題について述べる。