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 喜びに包まれるはずだった。あの日が訪れるまでは…。

 2015年9月18日、自動車業界を大きく揺さぶる発表があった。米環境保護局(EPA)がドイツVolkswagen(VW)社に対し、大気汚染防止法の違反通知を発行したのだ(関連記事1)。同社の4気筒ディーゼルエンジン「EA189」のエンジン制御システムに、EPA排出規制を不正に回避するソフトウエア「ディフィートデバイス(無効化装置)」が含まれていたというものだった。

 ディフィートデバイスは、排ガス試験中かどうかを自動で判定するもの(関連記事2)。排ガス規制の規制対象の一つになっている窒素酸化物(NOx)の排出量を、排ガス試験中の時だけ実走行時よりも減るように操作していた。当然、こうしたソフトウエアを使えば、実走行時のNOx排出量は規制値よりも増える。実走行時には、最大で規制適合レベルの40倍ものNOxを排出していた。

 白日の下に晒されたVW社による排ガス規制に対する不正回避問題。EPAが指摘した不正の対象車は米国の48万2000台だったが、同問題はすぐさま欧州に飛び火した。9月24日にはVW社が米国だけでなく欧州でも不正を実施していたことが判明した。

ドイツ・ヴォルフスブルクにあるVW社の本社工場
ドイツ・ヴォルフスブルクにあるVW社の本社工場
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 前代未聞の不正に、自動車業界は驚きと落胆、そして怒りで包まれた。エンジン技術や排ガス規制に詳しい早稲田大学理工学術院教授の大聖泰弘氏は「これほどまでに巧妙で悪質な不正は聞いたことがない」と断罪する。