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製造業で起こっている問題

 意外に思う人もいるだろうが、こうしたばらつきの理解が製造業の現場から消えかかっている企業があるということだ。しかも、そうした企業は技術力の低い一部の会社だけではなく、技術力や歴史を誇る大企業にも見られる。そこで、事例を踏まえながら、どのような問題が発生し得るかを紹介したい。これらの事例は自社に置き換えて考えてもらうとよいだろう。

Case1:ばらつきを現場が把握していない会社

 ばらつきを、設計や製造の条件を決める一部の技術者や、品質を確保する役目を担う一部の技術者しか理解していない場合がある。そうした一部の技術者が、顧客からの要求仕様をベースに、工程内の製造ばらつきや測定ばらつきを勘案した上で、設計仕様を決めたり製造条件を決めたりするのだ。先の「マージン①」~「マージン③」を考えて技術的根拠を踏まえた適切な仕様を設定しているため、この点では全く問題はない。

 しかし、こうした会社でも品質データ偽装が起こる素地がある。よくある事例はこうだ。工程内でギリギリ不良品が発生してしまったとする。知識を備えた技術者がマージンを踏まえた上で、「これであれば工程管理規格は外れているものの、お客様の要求仕様は満たしているから大丈夫だ」という判断を社内的に行い、一度は不良判定されたものを出荷することがある。正しい社内手続きの中で判断されているのであれば、この手続き自体は顧客の要求仕様を満足しているので問題はない。

 ところが、工程で製造に従事している担当者や技術者がマージンの概念を理解していないと問題が生じ得る。単に、「この検査結果は、社内規格から外れているが、出荷はOK」という結果だけを受けて出荷作業を行ってしまうことがあるからだ。これが何度か続くと、最悪の場合、「ギリギリ不良品であれば出荷はOK」、あるいは「少しくらいの仕様逸脱は出荷はOK」といった判断を工程が勝手に進めてしまう。いわゆる「社内特採」というものだ。ご丁寧に工程内に「(規格外だが)ここまでなら出荷はOK」といった、基準書まがいの書面まで作ってこの便宜的処置を日常化している会社もあるほどだ。

 もともとはマージンの概念を知る技術者が妥当な根拠をもって判断したのに、生産現場では根拠を抜きに結果だけで動く。すると、当初の根拠が当てはまらなくなってしまった状況でも出荷を続けてしまうケースがある。これが品質不正になってしまうのだ。工程の管理者や技術者もマージンの概念をきちんと理解すれば、この問題は回避できるはずだ。