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 レンズで光を集める光学望遠鏡は、人の眼で見ることができる可視光線しか観測できないが、あらゆる物質は電波を発している。電波は肉眼では見えないが、電波が見える望遠鏡であれば肉眼では見えない分子、天体の姿がとらえられる。その手段が電波望遠鏡なのだ。電波を受信するのだがら、それは宇宙にアンテナを向けた超高性能のラジオと言っていい(電波望遠鏡は英語では「Radio Telescope」だ)。その電波をとらえるのはレンズではなく、BSテレビ放送を受信するのと同じパラボラアンテナだ。ただし、それは巨大で、とてつもなく精密に作られているが。

2013年、酸素が半分の高地に

 2013年3月、南米チリのアンデス山脈の標高5000mという酸素が半分しかない高地に、参加国や予算額などプロジェクト規模としては史上最大の電波望遠鏡「アルマ」がデビューした。乾ききった、草木1本もない広大な砂漠が広がる火星のような世界だが、そこに1台およそ100トンもある巨大パラボラアンテナが66台も配置され、観測を開始した。

 各パラボラアンテナは自由に移動できるので、目的に応じて最大で直径16キロ内にレイアウトできる。16台のパラボアンテナは相互に光ファイバーで結ばれていて、同じ天体を同時に観測すると、山の手線のサイズのレンズを持った望遠鏡になる(干渉計という原理による)。

 最大の能力を発揮させると、その眼は、東京から大阪の1円玉が見えるほどの能力をもつ(見え方の能力が「角度分解能」)。これは視力なら6000に相当する。

 その「アルマ」望遠鏡がデビューから2年も経ていない、まだ助走段階で、試しにおうし座「HL Tau」を観測したところ、原始惑星系の円盤がクッキリと見えてしまったのだ。これは、「アルマ」の能力をフル発揮したわけではなく、東京から大阪の野球ボールが見えるに等しい視力2000にすぎなかったが、驚愕の姿が得られたのである。

チリ、アンデス山脈の標高5000mで観測を続ける「アルマ」望遠鏡。全アンテナの受信信号をスーパーコンピュータで統合することで信じがたいすごい「眼」なる。(写真・山根一眞)
チリ、アンデス山脈の標高5000mで観測を続ける「アルマ」望遠鏡。全アンテナの受信信号をスーパーコンピュータで統合することで信じがたいすごい「眼」なる。(写真・山根一眞)
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