送電線や発電所内の事故時の対策も検査
メガソーラー側の事故による影響を、連系先の送電線に及ぼさないようにする仕組みの一つに、保護装置がある。
遮断器、継電器、故障表示器、警報装置などがこの役割を担い、「保護装置試験」によって正常に動作するか検査する。継電器などは、メーカーが検査することも多いという。
遮断器に関しては、「遮断器関係試験」と呼ばれる項目もある。継電器などと同様に、メーカーが担当することが多いという。
また、高圧配電線に連系する太陽光発電所については、電圧の関係で検査の対象外となる。
PCSや昇圧変圧器に関する項目には、「負荷試験(出力試験)」もある。定格出力時に、PCSや昇圧変圧器の主要部における温度上昇が飽和状態になるまで連続運転し、変圧器などの温度が過剰に上昇したり、異常に振動したり、異音を発したりしないか確認する。
今回のメガソーラーにおける使用前自主検査では、中部電気保安協会はこの作業は担当しなかった。
この検査では、日本ならではの気象条件への対応が必要になる。日射に恵まれる国や地域と異なり、日本では定格出力の100%で発電している時間は限られる。そこで、出力時のデータで担保することが認められている。
この項目では、高調波の発生の有無も確認する。PCSで直流から交流に変換する際に発生することがある。連系先の送配電線に影響したり、同じ送配電線に連系している周辺地域の電気機器に対して、電気的な障害を与えたりする場合がある。
十分な対策を施したPCSでも、設置環境や周辺の状況によって、高調波の発生する可能性がある。中部電気保安協会が担当した検査でも、高調波の発生により、PCSメーカーが追加の対策を講じた例があったという。
PCSが正常に稼働を続けるのかどうかを確認する項目に、発電中に負荷が0%になった状態を想定した「負荷遮断試験」もある。
定格出力の4分の1、4分の2、4分の3、4分の4の出力時に、こうした遮断が起きても、電圧や波形に異常がないかを検査する。
負荷の遮断時に、定められた以上の電圧に上がり、連系先の送電線にトラブルを引き起こすことを防ぐ。
連系先の送電線や発電所内で事故が生じた際に、関連する機器に定められた動作が機能するかどうかを確認する項目に、「制御電源喪失試験」や「総合インターロック試験」がある。
制御電源喪失試験では、特別高圧送電線に連系する発電所では、連系設備を対象とし、遮断器、開閉器などの開閉状況や警報の表示を含めて確認する。
出力500kW以上2MW未満の高圧案件では、PCSの単独運転防止機能が正確に機能するのかどうかなどを確認することになる。
このほか、遠隔監視・制御システムも対象とする「遠隔監視制御試験」もある。津のメガソーラーの場合、現地に常駐して運用していることから、この項目は対象外になった。
また、使用前自主検査の項目に含まれていても、実際には実施されない項目もある。「騒音測定」や「振動測定」である。騒音や振動をほとんど発しないことによる。