山梨県のほぼ中央に位置する甲府市白井町。中央自動車道・甲府南インターから石和方面に抜ける国道140号(笛吹ライン)に近接している倉庫の屋根上に、4354枚の太陽光パネルを並べた出力約1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

図1●甲府南インター付近に立地
図1●甲府南インター付近に立地
(出所:斉藤倉庫)
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 この倉庫を開発・運営している斉藤倉庫(東京都調布市)が設置し、「甲斐の国メガソーラーステーション」と名付けた(メガソーラー探訪:2014年9月の掲載記事)。

 斉藤倉庫にとって、固定価格買取制度(FIT)を活用した太陽光発電は、取り組みやすい新規事業だった。

 本業である倉庫業は、土地を探して倉庫を建てた後、約10年かけて建設費を回収する。

 太陽光発電も、長期間で投資資金を回収するストック型の事業モデルである点は同じで、親和性がある。しかも、FITを活用すれば、買取価格が値下げされないという倉庫業にはない魅力があった。

 倉庫会社にとって、屋根に追加するのは金具くらいで、新たな雇用の負担もほとんどない。これだけ収益性の安定した事業は他にないとしている。

 甲府にある倉庫は、発電事業に向くと考えた。山梨県は日本で最も日照時間が長い上、倉庫の近辺には、日光を妨げる高層建築物などがない。

 しっかりとした発電システムを設置すれば、事業リスクは極めて小さいだけでなく、FITによる買取期間が終わった後も、倉庫のテナント企業に安い電力として使ってもらうなど、売電事業を継続しやすいと考えた。

 同社の場合、本業の倉庫業でも、長期信頼性や損傷などのリスクに対する警戒感が他社よりも強いとしている。初期投資が多少増すとしても、できるだけ安全性や信頼性に優れる設備を導入するとともに、太陽光パネルを設置した屋根の耐荷重性も十分に余裕を持っているという。

 こうした考え方は、発電を開始した後、自然災害によるトラブルを最小限に防ぐ効果にもつながり、思わぬ利点も生んでいる。

 屋根の耐荷重性では、本来必要だった費用に比べて、約3倍を投じた。出力約1MW分の太陽光パネルを屋根上に並べようとすると、屋根の一部に必要な耐荷重性である約14kg/m2を満たせない部分があることへの対応だった。

 この場所では、屋根を補強して耐荷重性を確保した。本来、必要な耐荷重性を得るための補強は、約150万円の費用で実現できた。しかし、せっかく補強するのならば、想定外の事態にも対応できるように、より安全性を高めようと考え、その3倍以上の約500万円を投じて補強した。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、テス・エンジニアリング(大阪市)に委託した。太陽光パネルは京セラ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した(図2)。いずれも、国内メーカーの中でも長期的な信頼性に優れた製品を選ぶという方針を貫いた。

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図2●京セラ製の太陽光パネル(上)、TMEIC製のPCS(下)
図2●京セラ製の太陽光パネル(上)、TMEIC製のPCS(下)
(出所:日経BP)
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 発電をはじめた2013年6月以降、それぞれの年に発電量の増減に影響するトラブルに見舞われながらも、年間を通してみると、どの年も当初の事業計画よりも約1割は多い実績で推移している。2017年は計画に比べて約13%増、2018年は同10%増となった。

 当初の事業計画では、年間で約119万kWhだった。これに対して、それぞれの年の実績は127万~130万kWh、累計では748万kWhとなっている。