「国内大手はスピード感に欠ける」

 最大の課題である、堤防とポンプが老朽化して浸水リスクが高まっていることに関しては、当初からその改修と補強がファイナンスの条件にもなった。それらの工事には30億円以上が見込まれ、市の予算で賄うのは難しかった。そこで、メガソーラー事業の一部として資金を調達し、パネル設置に先立って工事を進めることが必須だった(図8)。

図8●安全安心事業で増強し、市に寄贈した排水ポンプ場
図8●安全安心事業で増強し、市に寄贈した排水ポンプ場
(出所:日経BP)
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 こうした付帯的な工事に税金を投入せず、メガソーラーの売電収入で賄うには、FIT制度の認定をいち早く取得し、相対的に高い売電単価を確保する必要があった。「こうしたスピード感についてこられたのは外資系企業とベンチャーだけで、決断の遅い国内大手企業は、パートナーの選択肢にならなかった」と、武久市長は振り返る。

 地域の遊休地をメガソーラーに活用することに関しては、「工場の誘致に比べて雇用創出効果が少ない」などの課題を指摘する声もある。しかし、武久市長は、「民間工場の建設には、事前にアクセス道路を整備するなど出費も多く、市の事業としては必ずしも費用対効果は高くない。錦海塩田跡地のメガソーラープロジェクトでは、約2億3000万円で取得した土地から、年間約4億円の貸付料が入る。これを市が自由に使える意義は大きい」と言う。

 民間のメガソーラー事業が市にもたらす収入としては、このほか固定資産税があるものの、国からの交付税を受けている自治体の場合、独自の税収が増えると、交付税額が減らされるため、実際に使える財源はそれほど増えないという。「瀬戸内Kirei太陽光発電所」の場合、市有地のため、貸付料が市に入り、その増収効果は大きい。

 瀬戸内市では、メガソーラーからの収入を地域の活性化に生かす「太陽のまちプロジェクト」を企画しており、今後、町づくりに生かす方針だ。武久市長は、「メガソーラーの太陽光パネルの出力は、連系出力よりも大きいため、快晴なら余剰電力が生まれる。今後、蓄電池が安くなっていくので、余剰電力分をサイト内の蓄電池に貯め、地域で生かすような実証プロジェクトが実施できないか検討したい」と言う。