経済産業省・新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ(WG)は2018年11月26日に会合を開き、昨夏の自然災害で損傷した太陽光発電設備(連系出力50kW以上)の被害状況に関する調査結果を報告し、「斜面や土地改変した場所への発電設備の設置に技術基準を検討する」などの対応策を示した(関連記事)。

 経産省は、同WGで、再生可能エネルギー設備が受けた具体的な被災事例を公表した。特に9月4日に四国や近畿に上陸した台風21号による被害では、大阪府の沿岸などで「これまでにないタイプの太陽光パネルの損傷が起きた」との報告があった。 

パネルが「引きちぎれ」発火も

 大阪市住之江区にある物流施設の屋根上に設置されていた出力6.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)では、2万8160枚のパネルのうち、約半分の1万3780枚が台風21号の強風により、損壊・飛散した(図1)。

図1●損傷した太陽光パネルの状況
図1●損傷した太陽光パネルの状況
(出所:経済産業省・産業保安グループ・電力安全課資料)
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 加えて、ガラス表面が破損した後、内部の樹脂部分が何らかの原因で発火し、消火器で対応したという(図2)。

図2●太陽光パネルが発火した状態
図2●太陽光パネルが発火した状態
(出所:経産省・産業保安グループ・電力安全課資料)
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 パネルのほか、ケーブルラック本体の倒壊、ラック蓋・支持金具の飛散により、被害が拡大し、近隣の建物にも飛散し、建物を損傷させたという。

 特徴的なのは、パネルの取付金具は、パネルの端を挟み込んだ状態で残っていること。経産省・産業保安グループ・電力安全課では、「従来は、パネルと架台の接合部の強度が十分でなく、留めていたネジやクリップが外れたことでパネルごと飛散する事例があったが、今回はネジが外れていない状態でパネルだけが引きちぎられた」と分析する。

 原因は、台風21号による強風が設計風速を大幅に超過したことと推定される。設計上の最大風速は34m/s、地表面粗度区分Ⅲとなっているが、近隣の関西国際空港では最大瞬間風速60m/s以上を記録していた。

 このメガソーラーは、被災後、パワーコンディショナー(PCS)を解列して、全面的に運転を停止しており、パネル、支持物は、十分な風圧対策を取ったうえで、2019年以降、全面的に取替工事を行うことになっている。