消費者庁は1月28日、住宅用太陽光発電システムから発生した火災などに関する報告書を公開した。

 同庁の消費者安全調査委員会によるもので、「消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査報告書」としている。同項の規定に基づき、消費者の安全確保の見地から、事故の発生原因や被害の原因を究明した。消費者の生命や身体に関わる被害が発生したり、被害の拡大防止を目的とし、事故の責任を問う目的ではないと位置付けている。

 住宅用太陽光から発生する火災などの事故は、住宅の火災に至る恐れがあること、設置件数が2016年末時点で200万件を超える規模に達していること、消費者の操作によって発電を停止することが難しく、消費者による回避可能性が低いと考えられることなどから、今回の調査を実施した。

 住宅用太陽光の事故のうち、太陽光パネルとケーブルから生じた火災などについては、ケーブルが発火元と見られる場合には、推定原因が施工不良にある場合が多いことがわかった。一方、太陽光パネルが発火元と見られる場合には、推定原因は施工不良ではなく、パネルの不具合によるものと考えられる場合が多かったという。

 太陽光パネルが発火元となる原因として、パネルメーカーが作成した調査報告書を参考に、配線の接続部や、バイパス回路における不具合が経時的に進行して発火に至る場合があると推定した。

 報告書では、「パネルの発火に至るプロセス」を推定した。稼働中の住宅用太陽光を調査した結果、このプロセスの妥当性を確認できるような不具合が、実際に存在していることが分かったという。こうした不具合は、複数のメーカーの製品で確認された。

 このうちパネル内のケーブル接続部における不具合は、経年劣化や製造上の問題によって発生するとした。パネルが発火元と推定された事故は、設置してから10年前後を経過した住宅太陽光で発生していることから、導入後の経過年数も重要な要因としている。

 パネルやケーブルが発火元となる火災は、屋根への設置形態によって、屋根材への延焼による被害の度合いが異なる。

 太陽光パネルの屋根への設置形態は、おもに4つに分けられる(図1~2)。瓦、スレート、金属といった屋根材の上に架台を取り付けてパネルを固定する「屋根置き型」、屋根材にパネルが組み込まれていたり、屋根の全面にパネルが固定され、パネル直下のルーフィング(屋根の防水材)の表面に鋼板などの不燃材料を敷設する「鋼板など敷設型」、裏面に鋼板などの不燃材料を付帯したパネルをルーフィング上に直接固定する「鋼板など付帯型」、裏面に鋼板がないパネルをルーフィング上に直接固定する「鋼板などなし型」――である。

図1●住宅の屋根の基本構造
図1●住宅の屋根の基本構造
(出所:消費者庁)
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図2●屋根への太陽光パネルの設置形態
図2●屋根への太陽光パネルの設置形態
(出所:消費者庁)
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 火災の被害が大きくなったのは、屋根を構成している部材の一つである「野地板」に延焼したケースだった。野地板に延焼したことによって、被害が大きくなった火災が7件起きていた。

 野地板は、垂木の上に貼る板状の材料で、一般的に木材が使われている。野地板に延焼したことによって、被害が大きくなった7件の火災は、すべて太陽光パネルと野地板の間に、鋼板などの不燃材が挟まれていない「鋼板などなし型」で発生していた(図3)。

図3●「鋼板などなし型」は7件とも野地板に延焼
図3●「鋼板などなし型」は7件とも野地板に延焼
(出所:消費者庁)
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 一方、パワーコンディショナー(PCS)や接続箱が発火元となる火災事故も発生している。この要因も分析した。

 こうした調査結果を基にした、経済産業大臣と消費者庁長官に対する「意見」も公表した。両省は今後、この意見を受けて措置を講じ、その内容を消費者庁に報告する。