2件目の事故は、2012年8月に埼玉県で発生した火災だった。
居住者が帰宅したところ、太陽光発電のモニターの電源が入っておらず、ブレーカーが落ちていた。その時に、室内に焦げくさい臭いがした。しかし、屋外は確認しなかった。翌日、製造業者に連絡がつき、2日後に来宅して状況を確認した。すると、屋外の配線部が燃えていたため、居住者が消防機関に通報した。パネルからPCSまでを結ぶケーブル6本と、アース線1本が焼損していた(図5)。パネルの設置形態は「屋根置き型」だった。

消防機関は出火原因として、何らかの原因によってケーブルの被覆に傷が入り、素線が相互に短絡し、出火したものと推定した。また、製造業者によると、設計とは逆に接続されていたケーブルが1本あり、焼損部付近でケーブルが途中で継ぎ足されていた。これは、電気設備技術基準で禁止されている施工方法である。
3件目は、2013年3月に京都府で発生した。居住者から、発電量が十分に得られていないことへの対応を要求され、製造業者が点検したところ、発電量が低下していることと1枚のパネルのカバーガラスが割れていることがわかった。ガラスが割れていたパネルを交換した際、焦げている部分を見つけ、居住者が消防機関に通報した(図6)。発見時点で、このパネル内部の出火は鎮火しており、消火活動はしていない。屋根の焼損はなかった。屋根への設置形態は「屋根置き型」だった。
消防機関は、出火原因として、太陽電池セル(発電素子)の電極とインターコネクタのはんだ接続が不完全な状態で、使用し続けたことによって接続部に接触不良が生じ、抵抗値が増し、発電にともなう通電によって局部的に発熱し、封止材であるEVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)が焼損したものと推定した。パネルのはんだ接続の不具合では、はんだ接続部が発熱して瞬間的に715°C程度に達し、EVAが無炎燃焼する可能性があるとしている。
この件では、製造業者による分析として、はんだ付けの強度が低下して接合面積が減り、高抵抗となった接続部に電流が集中して温度が上昇し、この局部的な発熱によって封止材とバックシートが焦げ、接続面積の減少によって、回路が開放(断線)もしくは高抵抗の状態になったと推定した。その結果、バイパスダイオードに常時電流が流れ、発熱することにより、ジャンクションボックス内のバイパス回路にダメージが加わり故障した可能性が指摘された。最終的に、このはんだ接合部に発電システム全体の電圧が加わって過熱し、ガラスの割れにつながったとしている。
この太陽光パネルには、事故につながる2つの要因も重なっていた。1つは、このパネルが生産された2005年6月以前の製品設計では、セルの裏面電極とインターコネクタの間のはんだ接続強度が、製造条件のばらつきにより不十分となる可能性があったこと。もう一つは、同時期の生産品では、封止材の添加剤の管理が不十分で、製造条件のばらつきにより発泡の原因となった可能性があり、発泡による裏面膨れが発生するとインターコネクタをセル電極から引き剥がす方向に力が加わることだった。メーカーでは、この2つの不具合を改善し、2005年7月以降の生産品では発生していないとしている。