4件目の事故例は、2013年6月に新潟県で起きた火災だった。近隣住民が、屋根から煙と火が出ていることを見つけ、居住者に連絡した。居住者は、はしごで屋根に上がって、水道につないだホースを使って消火するとともに、119番通報した。太陽光パネルとその周辺が焼損した(図7~8)。屋根への設置形態は「屋根置き型」だった。
消防機関は、出火原因として、パネルのケーブルと接続した延長ケーブルがスパークし、屋根に落ちていた枯れたスギの葉に着火し、延焼したと分析した。ケーブルには、波型の連続した傷がついていた場所があった。これは、モモンガなどの小型の哺乳類が噛んだことでついたもので、ケーブルの被覆が破れ、延長ケーブルが集まってくるPF管(電線保護管)近くで短絡し、火花が飛びやすい状況だったと推察した。
5件目は、2013年8月に奈良県で起きた。居住者が不在中で、火災の警報が作動したため、警備会社の担当者が駆けつけた。室内には、煙が漂っていた。しかし、2階の窓を開けると、警報音が止まったため許可を得て帰った。その後、帰宅した居住者が住宅内を確認すると、屋根裏の収納庫に焦げている部分があり、消防機関に通報した。ケーブルの一部と屋根裏の一部が焼損した(図9)。パネルの設置形態は「鋼板など付帯型」だった。
消防機関による出火原因の推定は、以下の通りである。住宅販売会社の子会社が、2012年1月頃に屋根裏部屋の建築工事で、既設の配線の盛り変えを請け負った。その際、太陽光発電設備のケーブルを棟木の上に通す必要が生じ、もともと配線されていたこのケーブルを切断し、線心をリングスリーブで圧着し、ビニール絶縁テープで端末を処理した。その後、建設業者が石膏ボードを垂木に貼り付けて工事を完了した。
この結果、ケーブルは、上部が野地板に、下部が石膏ボードに、左右を垂木に挟まれた狭い空間に閉じ込められた。このケーブルは、狭い空間の中で日中は毎日、太陽光発電電力が通電することで発熱し、その熱を逃がすことができない環境に置かれ続けていた。この状況が続いた結果、ケーブル結束部の内部に熱がたまって過熱し、端末のビニール絶縁テープが溶融してしまい、リングスリープで圧着され、接続された銅線が剥き出しになり、最終的にこの銅線同士が接触して短絡し、スパークしてケーブルの被覆が燃焼し、出火したと推定している。
6件目は、2014年8月に神奈川県で起きた。通行人から、居住者に「家から煙が出ている」との連絡があり、居住者が消防機関に通報した。太陽光パネル、野地板、屋根裏の一部が焼損した(図10~11)。太陽光パネルの設置形態は「鋼板などなし型」だった。
消防機関は、出火原因として、施工不良によって、太陽光パネルの異極同士のケーブルの被覆が複数箇所損傷し、パネルのアルミフレームや屋根に固定している金具を媒介した短絡状態となって放電が発生し、パネル固定用の樹脂製建材に着火したと推定した。
火災が発生する以前から、ブレーカーが落ちたり、PCSが直流地絡を示す警報を発していた。ブレーカーが落ちた際には、漏電を確認した2系統を遮断したが、火災を防げなかった。この際、パネルを遮光するなどの適切な措置をとっていれば、火災の発生を予防できた可能性があると指摘している。