想定した発火プロセスとは異なる不具合によって、火災に至る事故が進む場合もある。
今回の現地調査では、バイパス回路の断線箇所を確認する際に、該当する場所のジャンクションボックスに充填されている樹脂が、褐色に変わっていながら、このパネルのはんだ配線接続部の温度分布の画像からは、第1段階の「高抵抗化」を確認できなかった場合があった。
こうしたケースでは、想定した発火プロセスとは異なる不具合や進行によって、バイパス回路が断線する可能性もある。仮にこのような場合でも、その後、当該する回路ではんだ配線接続部が高抵抗化すると、安全保護回路であるバイパス回路はすでに断線しているため、 第1段階から直接、第4段階に進むことが考えられる(図7)。
いずれにしても、バイパス回路が断線した状態で、はんだ配線接続部が断線した場合には、発火のリスクがある。
また、カバーガラスが全面にわたって割れている太陽光パネルも2枚見つかった(図8~9)。そのうち1枚は、パネルの温度が約190℃まで達している場所があった。何らかの原因で、ガラスが割れた影響で発熱していた可能性も考えられる。ガラスの割れによって、セル(発電素子)が割れ、セルのP層とN層が部分的に短絡して発熱する場合もある。
ガラスの割れに伴う発熱によって、付近の配線接続部のはんだが融点を超え、接続強度が下がり、配線接続部の高抵抗化が生じる可能性がある。Sn-Pb(鉛)はんだの融点は183°C、Sn/Ag/Cu(鉛フリー)はんだの融点は217°Cとなっている。