室温上昇への影響は0. 064度

 次に反射光による室温への影響を計算しました。原告は、2階リビングをエアコンなしで窓を開けて使用しています。一部の報道で、「室温が50度以上になる」との表現がありますが、裁判記録を見ると、50度を超えているのは、直射日光の当たる出窓に置いた温度計で、リビング部屋中央では高くても37度程度という測定結果が証拠として提出されています。

 裁判記録では、植栽によって、平均室温が3.2度下がったとしています。植栽によって、太陽光の直射と反射光の双方が遮られているので、直射光と反射光のエネルギーの割合を計算することで、反射光による室温差を概算します。

 具体的には8月1日に東面の壁に差し込む直射光のエネルギーとパネルからの反射光のエネルギーを比較します。直射光については時間そのもの、反射光については時間に反射率(直射光エネルギーのうちパネルで反射した割合)を乗じます。太陽光パネルの反射率は、太陽光の入射角によって異なりますが、8月1日の入射角(約72度)では一般的に約6%です。

 以上を計算すると、8月1日に東壁面に差し込む時間は、直射光=314分、反射光=106時間、エネルギー量では直射光=314、反射光=6.36(106時間×反射率0.06)となり、反射光の割合は約0.02(6.36÷314)、つまり約2%になります。これを実測された室温差である3.2度にかけると約0.064度(温度差3.2度×反射光割合0.02)になります。

 この計算方法の前提には、植栽によって東壁面への直射光と反射光のすべてが遮られた一方、南壁面については直射光の入射は変わらず、反射光の入射は無視できると仮定したことや、エアマス(太陽光が地上に届くまでに通過する大気量)による減衰などを考慮していないなどの課題もあり、あくまで概算で誤差があります。

 それでも夏の反射光による室温の上昇はわずか0.06度に過ぎず、体感できるほどの温度差は生じないと思われます。それにもかかわらず、原告が室温の上昇を感じた要因としては、以下の2点が推測できます。

 1つは、以前は湿地だったところを太陽光発電所にしたため、「打ち水」効果がなくなり、周囲の温度が以前よりも上昇した可能性があること。2つ目は、太陽光パネルをまぶしく感じるため、体感的により暑く感じる可能性があることです。

 ちなみに室温への影響で、パネルの反射率として用いた「6%」は、エネルギー量としては大幅に減っていますが、人の目にはまぶしく感じます。

 今回のシミュレーションなどを通じてわかったことは、室温への影響は極めて限定的なものの、反射光自体は、ほぼ1年を通じて原告宅の窓に差し込み、まぶしくて直視できない時間も1日30分から2時間程度あることです。

 原告が裁判を起こすまでに反射光に対して不満を感じた背景には、この「まぶしさ」が影響している可能性が大きいと思われます。太陽光パネルの設置レイアウトを検討する際には、この点にも十分に配慮することが重要に思われます。