ここ数年、大規模な太陽光発電所においても、初期投資と売電ロスを減らせるという期待から、分散型のパワーコンディショナー(PCS)の採用が増えている(図1)。

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図1●海外メーカー製の分散型PCSの採用例
図1●海外メーカー製の分散型PCSの採用例
(出所:日経BP)
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 初期投資の低減では、従来の集中型に比べてPCSの購入費用が安いことに加え、設置時の施工費を削減できると言われる。施工費の削減は、架台の後ろに固定できるため、集中型のようにコンクリートの大きな基礎が不要なことによるが、分散型PCSの方がケーブルの敷設コストが増えやすいことを考慮すれば、それほど差がないとの声もある。

 売電ロスが減る利点も、場合によるので一概にはいえない。何らかの原因でPCSが稼働を停止した時に、集中型よりも送電が止まる太陽光パネルの枚数が少ない点や、敷地内でパネルの向きや影がかかる状況が異なる時に、その影響を最小に留められるという点が、分散型の利点として強調される。ただ、実際には分散型の不良率の多寡に左右されることもあり、まだ評価し切れていないというが実態だ。

 O&M(運用・保守)については、現場側と経営側で意見がはっきり分かれる。実務を担う側は、分散型の点検作業が非効率なことや、採用した機種が海外メーカー製の場合には、点検時の安全性が確保されていない場合がほとんどで、点検作業時に作業者が感電するリスクや、PCSが損傷するリスクを指摘することが多い。

 一方で、発電事業者など、経営面のみで評価しがちな立場からは、海外で実績があり安全性などには十分、考慮されているはずであること、故障した場合、翌日にはメーカーが新品を配送する体制をとっていることから、O&Mでも問題がないはずだとの意見が多い。

 実際のところ、点検作業において、どのようなリスクがあるのだろうか。

 分散型PCSといっても、国内メーカー製の場合には、点検時の安全性、損傷の両方のリスクはまずないという。点検を想定した設計となっているためである。

 外から筐体の扉を開けることができ、スイッチを使ってストリング(太陽光パネルを接続する単位)ごとに直流の発電電力の入力を遮断するという、電気的な安全を確保した状態で、電気保安管理業務で必要な絶縁抵抗を測定できる。

 問題は、海外メーカー製の分散型PCSとなる。欧州や東アジアのメーカーが製造・販売し、国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)における採用が増えている。