世界最安の売電額でも「事業性は高い」
――日本では、発電事業には取り組まない方針と聞いています。一方で、海外では、UAEのアブダビ首長国において、丸紅と組んで大型プロジェクトで応札しています。海外では、こういった大型プロジェクトに積極的に参画していくのですか。
その可能性はありますが、プロジェクトごとに対応は異なってくるでしょう。太陽光パネルの供給を担うのが基本ですが、UAEの案件のように、発電事業者として参画する場合もあるかもしれません。
――アブダビでのプロジェクトについて、概要を教えてください。
現時点では(取材日:3月2日)、あまり多くのことを公開できる状況にはありません。
これまでに発表した内容は、丸紅と共同で参画しているアブダビ首長国のスワイハン太陽光発電プロジェクト(Sweihan Photovoltaic Independent Power Project)に関わる売電契約を、アブダビ水電力会社(Abu Dhabi Water and Electricity Company:ADWEC)と締結したということです(関連ニュース)。
出力規模は、太陽光パネルの出力ベースで1.177GW(1177MW)となり、世界有数の規模と競争力を誇るプロジェクトとなります。
商業運転は、2019年4月に開始する予定です。発電した電力は、25年間の電力購入契約(PPA)に基づいて、ADWECに売電します。
発電所が立地するのは、アブダビ首長国の内陸部にあるスワイハン(Sweihan)です。
――このプロジェクトでは、ADWECが入札の結果を公表し、ジンコソーラーと丸紅によるコンソーシアムの応札価格は、「2.42米セント/kWh」という、世界最安の売電単価となっています(図)。この売電単価については、一般的に推定できる製造・販売原価を大きく割り込むような価格で太陽光パネルを供給しない限り、実現できないとの指摘もあります。
そのようなことはありません。応札した売電価格は低いのですが、収益率は、他の国で進んでいる大型プロジェクト、例えば、メキシコやインドの案件の場合に比べて、高くなる試算です。このことから、参画を決めています。
詳細は公表できませんが、そのように考えている理由は、主に二つあります。
一つは、事業モデルです。このプロジェクトは、丸紅とジンコソーラーの2社だけの出資ではなく、アブダビ政府(アブダビ水電力省)が過半数を握り、主導しています。この組み合わせで事業化することで、収益性の高いプロジェクトとなっています。
特定目的会社(SPC)への出資比率は、アブダビ水電力省が60%、丸紅とジンコソーラーはそれぞれ 20%ずつとなっています。
もう一つは、高出力タイプの太陽光パネル、それも、現地の環境に適したパネルを使うことです。これによって、発電コストを下げています。