――DSMは、化学メーカーの老舗として長い歴史があり、幅広い分野で展開しています。そのなかで太陽光パネル向け材料の現状を教えてください。
Grimberg DSMは、1902年にオランダの炭坑公社として設立されました。その後、石油化学に主業を変え、現在はビタミンなどの微量栄養素(ライフサイエンス)やマテリアルサイエンスを核に事業を展開しています。
マテリアルサイエンスでは、自動車や電子・電気向けの高機能樹脂を中心としています。自動車向けではエンジン周辺に部材などで強みがあります。太陽光パネル向けの材料も、この事業分野の一つです。
太陽光パネル向けの材料では、2011年に反射防止用のコーティング材の事業を立ち上げました。これを起点に、太陽光パネル向けの他の材料にも展開しています。
例えば、住宅向けではこのほか、バックコンタクト(裏面電極)を採用した太陽光パネル向けの樹脂製シートを低コストで製造するプロセスを開発しました。それを応用した製品の量産が目前となっています(図3)。
裏面電極を採用した太陽光パネルは、セルの表面に電極がないため、通常のパネルに比べて、発電できる面積が大きくなり、変換効率が向上します。
ただし、通常のパネルでは使わない、銅配線を施したシートを追加する必要があります。このシートの製造コストが高く、裏面電極パネルの価格の高さの要因となっています。
DSMでは、この銅配線付きシートを低コスト化しました。既存の銅配線付きシートは、銅配線の形成に半導体製造プロセスなど、コストの高い手法を採用していました。
そこで、コストの安い製造プロセスを採用しながら、シートに形成する銅配線に求められる精度や性能、品質を維持できる手法を開発しました。