中国トリナ・ソーラーは、太陽光パネルの世界的なトップメーカーとしてグローバルに展開している。日本でも昨年、岡山県瀬戸内市で稼働したメガソーラー(大規模太陽光発電所)や同県美作市で建設中の発電所など、国内最大級のサイトに納入するなど、存在感を増している。3月初旬に太陽光関連の展示会に出席するために来日した高紀凡(Jifan Gao)会長 兼 CEO(最高経営責任者)に製品戦略などについて聞いた。
3月初めに都内で開催された見本市では、太陽電池セル(発電素子)のバスバー電極・9本仕様など、従来よりも電極本数の多い「マルチバスバー(MBB)」タイプのセルを搭載したパネル(モジュール)製品を中心に展示していました。

高CEO 「MBB配線」は、高効率化の技術として有効です。太陽電池のセル表面では、発生した電流をまずフィンガー電極で集め、バスバー電極で集電します。バスバー電極の本数を増やすことで、フィンガー電極上の電流の伝達距離が短くなり、内部の抵抗損失を減らせます。さらにバスバー電極が多いことで、マイクロクラック(微細な割れ)や断線の影響も受けにくくなり、信頼性が増す利点もあります。
トリナ・ソーラーはMBB配線の技術で、申請中を含めて54件の特許を保持するなど、早くからこの技術の研究開発に力を入れてきました。中国国内で、MBB配線を搭載したパネルの出荷量ではトップとなっています。
国土の狭い日本は、限られた面積でより多くのパネル出力を確保する必要があり、より高効率のパネルが求められています。また、太陽光発電の先進国であり、世界的にも最先端の技術がもっとも早く受け入れられる市場でもあります。
モジュールの積層技術としては、カバーガラスに加え、通常は樹脂製シートを使う裏面保護材にもガラスを使った「両面ガラス」タイプ、さらに裏面でも発電できる「両面発電」タイプのセルを採用した製品にも力を入れていますね。
高CEO 両面発電タイプは、N型半導体による独自の技術を採用しており、MBB配線技術などと組み合わせることで、さらに効率が高まります。これらのN型半導体技術は、変換効率が高まるだけでなく、曇りなど弱い日光でも発電量が伸びることや、長期の劣化率が低いなどの耐久性の面でも利点があります。
N型半導体技術は、パナソニックのヘテロ型太陽電池「HIT」でも採用していますが、高効率である半面、製造工程が複雑でコストが高いことが大きな課題です。
高CEO 確かにN型太陽光電池は、従来のP型製品に比べると製造プロセスが多くなる分だけ、いくぶん製造コストが上がります。ただ、変換効率の向上により、パネルの設置枚数が減って施工コストが下がるほか、発電量の増大効果が大きいため、最終的にLCOE(均等化発電原価)を下げられると見ています。
N型太陽光電池の普及は、これからという段階ですが、数年後には大きく伸びるでしょう。製造コストの削減など、技術革新の余地は大きく、開発に力を入れています。