「グリーン」から「ブラウン」に
――従来、「ファンド」と言えば、株式市場の有望な銘柄に投資し、高いリターンを期待するというイメージがあります。FITはこうした投資運営業務になじむのですか。

阿部 株式への投資では、企業の利益がリターンの原資になりますが、これは業績によって変動し、リスクもあります。FITの場合、法的に売電単価が決まっています。日照によって発電量は変動しますが、年間を通じてみれば、収入は安定しています。
ファンド運営の視点から見ると、これほど安定した投資先はないほどで、実際、これまでFITで開発した総事業費約2000億円のファンドは、投資家にとってたいへんに良い商品になったと思います。年金など特に長期運用をする資金には向いています。
FITでは、電気利用者の負担する賦課金の大きさが問題になりますが、同じ主体である電気利用者がファンドを通じて再エネ事業に投資すれば、リターンとして戻り、資本が循環します。ファンドによるインフラ構築には、こうした優れた側面があります。
東京都の創設した官民連携再エネファンドの運営事業者に応募した際も、こうしたファンドの意義を強調しました。結果的に選定されたのは、長年のファンド運営の実績に加え、こうしたビジョンも評価されたのかもしれません。
――昨年11月に200億円規模の「再生可能エネルギーブラウンフィールド・ファンド」を組成し、運用を始めました。最終的に500億円に拡大すると公表しています。
阿部 これまでは再エネの開発から安定稼働までに投資する「グリーンフィールド・ファンド」を手掛けてきました(図1)。今後は、安定稼働している実績のある再エネ設備が増えてきたこともあり、これらに投資する「ブラウンフィールド・ファンド」が伸びると見ています。
開発時のリスクのない「ブラウンフィールド・ファンド」は、さらに安定したリターンを期待できます。また、今後、売りに出てくる稼働済み案件も増えてくるはずで、それらを評価して適正な売値と判断すれば、積極的に購入していくつもりです。
これまでの再エネ開発の蓄積があるので、発電所を評価する力も付いてきています。こうした購入案件もブランフィールド・ファンドに組み入れられます。