キャベツをサラダにして売る

――いまのように長期に固定された買取価格がなくなっても、事業的に成り立ちますか。

阿部 FITによる事業用太陽光の売電単価は、2018年度に18円/kWhに下がりそうですが、システムコストや設計・施工コストの低下もあり、この単価でも事業性のある立地はまだまだあると見ています。一方で、住宅用の電気料金は20円/kWhですし、乾電池に貯めた電気の単価は、さらに一桁から二桁も高い価格になっています。

 つまり、再エネの電気を電力会社に卸売りせず、直接、消費者に小売りする「B to C」ビジネスに転換できれば、いまの発電コストでも十分に利益が出ます。キャベツを市場に売るより、サラダにしてコンビニで売った方が高く売れるようなものです。

 200カ所のサイトを持つと、こうした次世代のビジネスモデルが視野に入ってきます。いまの25サイトで約2000億円の事業規模は、200カ所で2兆円規模にまで拡大します。ファンドに組み込んでいけば、多くの電気利用者もこうした事業に投資できます。

――現在、開発・運営している25サイトの再エネの立地も、そうしたビジョンを踏まえて立地を選定しているのですか。

阿部 先走りして大風呂敷を広げてしまいましたが、スパークスのような中小企業が、いきなり200カ所を目指して戦略的に再エネを開発することはできません。いまは、一つひとつの発電所を地道に開発し、積み上げています。その時の視点は、投資家にとって安定したリターンの得られる、質の高い発電所を作るということです(図2)。

図2●スパークス・グループが千葉県内に建設したメガソーラー
図2●スパークス・グループが千葉県内に建設したメガソーラー
(出所:日経BP)
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 ただ、こうして一つひとつを着実に積み上げ、100カ所、200カ所になっていけば、いまのFITビジネスとは異なった次元のエネルギービジネスが見えてくるはずです。

 もちろん電力事業にはさまざまな制度や規制が絡むので、現時点で具体的なビジネスの形を明確に描ける人はいません。ただ、「地域に分散した再エネ」が大きな価値を生むというイメージは、投資家としての感性でしょうか。あと5~6年もすれば、こうした期待感が再エネ発電所の売買にオプションとして反映されてくると見ています。