W単価でP型を下回る

今後、N型モジュールの製造コストはどこまで下がりますか。

Liu 既述したように製造装置の工夫やサプライチェーンでの連携によって、N型モジュールの製造コストは着実に下がってきました。シリコンウエハの価格は、今後、N型の需要が伸び、スライスの厚みも薄化が進むことを考えれば、さらに下がっていく見込みで、P型と同レベルか、より低い価格になると見ています。

 ただ、両面発電の場合、N型モジュールでは両面に銀ペーストを使うため、銀とアルミニウムを使うP型に比べると材料コストが高くなります。これに関しては、新技術の導入などで使用する銀ペーストの量を大幅に減らせる見込みです。銀使用量の差はわずかになり、モジュール価格への影響は無視できると思います。

 製造プロセスの革新に向けた設備投資は、N型モジュール陣営全体で見れば、P型PERCモジュール陣営と同等の投資を続けています。これにより、N型のワット(W)当たりの単価はP型に近づいており、効率の高さを考えれば、近い将来、下回るでしょう。加えて、信頼性やワット当たりの発電量(Wh)が多い特性を考えれば、発電事業者にとって優位性が高いのは明らかです。

両面発電の特徴を生かすには、どんな立地が考えられますか。

Liu 裏面にも日射が入るという点で、野立ての太陽光に向いています、また、水面からの反射光が多い水上太陽光にも適しています。積雪地域では、雪による裏面への反射光で発電量が増えることに加え、裏面発電によりモジュールの温度が上がり、表面に積もった雪が短時間で融け落ち、表面の発電量を復活させる効果もあります(図3)。

図3●積雪地域に設置した両面発電モジュール
図3●積雪地域に設置した両面発電モジュール
(出所:Jolywood Solar Technology)
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした効果は、北海道に設置した両面発電のサイトで冬期に実証されています(関連記事)。

 また、特殊な用途としては、高速道路脇の防音壁に垂直に設置することも有望です。両面とも多くの光を受けられることで、最適の向きに設置した場合に比較しても85%程度の発電量が得られるケースもあります(図4)。

図4●高速道路脇に垂直に設置した両面発電モジュール
図4●高速道路脇に垂直に設置した両面発電モジュール
(出所:Jolywood Solar Technology)
[画像のクリックで拡大表示]

 2018年以降、多くのメーカーがN型両面発電モジュールの製品化を検討しており、今後、市場投入が始まります。そうなれば、このほかにも、その特徴を生かしたアプリケーションが続々と出てくる可能性が高いと見ています。