――トリナ・ソーラーでは、産業用・住宅用ともに、太陽光パネルの販売だけでなく、発電システムや遠隔監視・制御システム、さらに、太陽光発電を導入したマイクログリッドの全体制御といった分野まで関わっていく方針を、3月に明らかにしました(関連コラム)。追尾型の架台システム大手も買収しました(関連ニュース)。ただ、そのすべてを日本で実現するのは難しいとも感じます。日本では、どのように展開していきますか。
産業用については、水上型などのシステム提案を先行します。
日本の水上型のシステム提案では、太陽光パネルは両面ガラス型、直流回路1500Vを想定しています( 関連ニュース)。これは、海外での提案内容と同じです。
しかし、太陽光パネルや接続箱を水上に浮かべるフロートについては、日本独自のものを提案します。池の安全性などをより優先した発電システムとするためです。
日本ではさらに、2019年ころを目安に、積雪地向けのシステムの提案をはじめる予定です。詳細については、まだ明らかにできませんが、積雪地ならではの課題を解消しながら、一定以上の事業性を確保しやすい発電システムを実現します。
こうした、一般的に「ニッチ市場」と分類される市場でも、日本には大きな可能性が残っていると考えています。
大規模な市場では、どうしてもワット(W)単価の競争になりがちですが、エネルギー転換を世界的に実現しつつある分野で、価格競争ばかりの展開では面白くありません。
管理に課題を持つため池や、積雪で不便や不利を抱える地域において、適切な太陽光発電システムを提案することによって、事業面だけでなく、さまざまな利点をもたらし、地域に新たな幸せをもたらす存在になりたいと考えています。
また、蓄電システムについては、すでに日本でも産業用と住宅用の両方に展開しています。住宅用では、すでに納入実績もあります。
「エネルギーIoT」といった取り組みは、こうした太陽光パネルだけでなく、発電システム全体を最適化する取り組みから、さらに電力全体に近い広い分野まで事業の領域を拡大していく取り組みです。
太陽光発電という分散型の電源を多く活用したマイクログリッドでは、スマートなエネルギーのネットワークが確立され、さまざまな立場のプレイヤーが自由にエネルギーをやり取りする状況が実現されるでしょう。そのプラットフォームを構築していく取り組みです。
まずは中国で取り組みが始まる予定です。
そこでは、太陽光発電システムだけでなく、蓄電システム、クラウドコンピューティングや金融、IT(情報技術)、コンサルティングなどの戦略的なパートナーとエコシステムを構築し、送配電、電力取引、需給管理まで取り込んだ事業モデルを築きます。
――営農型向けの取り組みは、どのような状況でしょうか。最近では、タイ系の太陽光発電事業者のビーシーピージージャパン(BCPGジャパン:東京都港区)が、静岡県御殿場市で2カ所・合計出力約4.4MWの営農型のメガソーラーに、トリナ・ソーラーの太陽光パネルを採用したことを明らかにしています。
営農型も、期待している分野です。ただし、現状では、日本全体で当初、期待した規模に比べ、市場の拡大が遅れている状況です。今後、ルールの変更などによって、拡大のきっかけが訪れることを期待しています。
また、営農型や水上型は、下が農地か水面かという違いはありますが、それぞれの分野を横断したような太陽光発電所が開発される可能性があります。
中国では、水上型の太陽光発電所に、日本の営農型のような架台を組んで発電設備を設置している例もあります(図)。出力は約120MWと大きく、両面ガラス型の納入先の一つです。
下は湖の水面で、養殖が営まれています。湖に柱を立てて、高い場所に両面ガラス型を固定しています。この案件で両面ガラスが採用された理由の一つは、魚が育つには、一定の光が必要なためとのことです。