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「30日ルール」が買取価格を押し上げ

経産省はようやく「グリッドコード」と称して、再エネ電源が系統接続する際の法的な要件を検討し始めました。こんなにも後手、後手になっている原因をどう見ますか。

安田 日本には、電力システムに詳しい再エネ専門家、もしくは、再エネに詳しい電力システムの専門家が極端に少ないのです。つまり、再エネと電力システムを適切に橋渡しする人材が不足しています。海外では、こうした人材は豊富です。正確に言うと、日本でも大手電力会社の中にいるのですが、少数派にとどまり、上まで声が届かなったのでしょう。

 そうしたなかで、政策担当者が再エネのリアルタイム制御の重要性に気付かないまま、FITが導入され、設置が始まってしまったのです。

「30日ルール」という「出力制御8%」を制度的に明示してしまったことも、今となっては世界水準からかけ離れているということになりますね。

安田 再エネ事業者にとっては、ファイナンスの組成上、あらかじめ出力制御率の最大値が分かっていることが重要です。5%でも8%でも、それにあわせて事業計画を組み立てればよいのです。ただ、日本では「8%」という過大な抑制量を前提にしてしまった分だけ、それがファイナンスコストに加算され、結果的に買取価格を上げてしまいました。その意味では、国民経済的にマイナスで、国民が損をしているのです。

 そもそも、日数や時間でなく、「kWh」での抑制率を目標値にすべきです。リアルタイムでこまめに制御する前提ならば、こうした発想になるはずです。

系統WGの流れを振り返ると、指定ルールを導入して出力制御率を大きく見せることで、ファイナンスを困難にして再エネ開発を冷やしたい、という意図も感じました。

安田 「出力制御=悪」というイメージを与えてしまったのは、まさにそうした将来の不安を煽るような国や電力会社の最初のメッセージにも原因があります。その意味では、出力制御のイメージが悪くなったのは、自業自得の面もあり、当初から、「これだけ大量の再エネを導入するには、この程度の出力制御は必要」と、プラス面を十分に説明していれば、発電事業者はもっと前向きに捉えて、協力したと思います。

結局、太陽光のエネルギーミックスの目標値である64GW(電源比率7%)の達成が見えてきたなか、その先、どこまで再エネ、そして太陽光を増やしていくのか、という国のビジョンを示せないことが、再エネ政策への不信感の根底にあります。新規開発への意欲が削がれ、既存発電所の利益最大化という方向になりがちです。

安田 いまの日本は、原子力の「答え」を出せないなか、それに引きずられて、再エネの長期ビジョンも示せない、という状況が続いています。再エネの「主力電源化」といいながら、2050年の導入目標を示せないのはそのためです。

 ただ、原子力の「答え」を当面、出せないなら、それとは別に再エネの長期的な導入目標を掲げていく、というやり方もあると思います。

 中国では、再エネ関連の研究所が、「2050年に再エネの電力比率90%」という長期目標を発表しています。残りの5%が原子力、5%が石炭火力です。政府自体の発表ではありませんが、国立研究所なので、国や共産党の意向も加味していると捉えられています。

 再エネを軸に電力システムを再構築することに関し、世界ではここまで本腰を入れてきているのです。「22~24%」という2030年の再エネ目標のさらに先を示せないと、電力システムの技術でも、20世紀のまま停滞し、世界から取り残されかねません。