買取価格を決めるだけではない

一橋大学大学院・商学研究科の山内弘隆教授
一橋大学大学院・商学研究科の山内弘隆教授
(出所:日経BP)

 ただ、その後、太陽光の設備認定量が突出して積み上がるなど、委員会に求められる役割も徐々に変わってきました。単に再エネの適正な導入コストを積み上げて調達価格を算定するだけでなく、調達価格の変更によって実際にどのくらいの導入量となるのか、ある程度、予測することも求められ始めました。

  そして、その後、2030年のベストミックスが固まり、政府としての再エネ導入目標(電源構成比22~24%)が明確になりました。今後はこの導入目標を達成することも、委員会に求められます。加えて、FIT見直しによって、住宅太陽光については、数年後の調達価格も決めておくことになりそうです。中期的な調達価格を事前に示すことで、民間事業者が再エネにより取り組みやすくするのが狙いです。

 ただし、このように調達価格等算定委員会の位置づけが変わっていく中で、いまの委員会の体制で、十分に期待された機能を果たせるか、という問題もあります。

――2016年度の買取価格を算定する委員会では、病気療養中の植田和弘委員長に変わり、委員長代理として進行役を担いました。

山内 調達価格等算定委員会は、国家行政組織法第8条に基づく、いわゆる「8条委員会」で、委員5人は国会の同意人事です。こうした組織体制になったのは、当時の政治的な背景の中で決まったことです。福島第一原発の事故以来、再エネをいかに活用するかという国民的な議論の中で、首相の進退問題にまで発展しました。こうした流れのなかで、調達等算定委員会は、「8条委員会」として非常に大きな役割を担うことになりました。

 ただ、結果的に委員は5人となり、他の審議会などに比べると少人数の体制になりました。委員会や審議会のメンバー数について、どの程度が適切かは難しいところですが、幅広い視点から活発な議論を行うには、やや少ないようにも感じています。

 加えて、植田委員長が病気で出席できないという不測の事態の中で、私が代理を務めたため、委員は3人しかいません。こうした少数の体制で、再エネの将来の方向性を議論していくには、限界も感じています。政策を議論する審議会では、事務局(官公庁)が資料を用意して議論の土壌を作っていくことが一般的ですが、この人数では、あらかじめ用意された方向性を超えるような議論を展開するのはなかなか難しいのが現実です。

 あくまで個人的な意見ですが、今後、求められる専門性の高いテーマに関しては、調達価格等算定員会の下に、補完的に小委員会やワーキンググループなどを設置してほかの専門家も含めて多方面の視点から議論を深めることも検討課題と思います。そこでの評価を基に最終的に調達価格等算定委員会で算定するという進め方も可能に思います。