変動電源が市場を攪乱?

一橋大学大学院・商学研究科の山内弘隆教授
一橋大学大学院・商学研究科の山内弘隆教授
(出所:日経BP)

 もともと電力市場には、常に需給を一致させる必要があるという即時性と、発電所の投資から回収まで数十年を要すると長期性という2つの特殊な側面があります。そこにボラティリティ(変動性)の大きい電源が入ってくるということで、市場の攪乱要因になる恐れがあり、それが市場の失敗につながるのです。

 そこで、市場原理を補完し、収益性の低い火力発電所を維持するコストを誰かが負担する仕組みが検討されてきました。

 その1つが「容量市場」と呼ばれるものです。電力事業者に一定割合の予備電源(バックアップや系統安定化用の待機電源)を確保することを義務付け、市場を通じて調達できるようにするものです。従来の電力卸市場では、発電した電力量(kWh)を取引しますが、容量市場では、電源の容量(kW)を扱うことになります。

――誰に予備電源を確保する義務を負わせるかなど、様々な議論がありますが、大事なのはコスト負担の問題ですね。

山内 ゴルフ場の会員権のように利用者が建設資金を出し合い、会員権保持者は安く利用できるような仕組みを構築できないかと考えています。予備電源は、「使いたいときに使える」、いざというときに備え「待機している」こと自体に価値を持ちます。緊急時に火力発電のバックアップや調整力を利用する事業者がコストを負担し合うのです。

 火力発電事業者にとっては、再エネの普及で稼働率が落ちても、「待機料」として収入が得られれば、事業性を維持できるし、投資回収できます。容量市場を通じて、火力発電所に待機料が還元される仕組みをうまく構築できれば、市場の失敗を補完できます。

 もっとも変動電源が電力卸市場に増えても、「市場の失敗」は起きないとの見方もあります。ただ、こうした考え方は楽観的に過ぎると感じます。いかに「容量市場」をうまく機能させるか、その仕組みを検討していくべきだと思います。