「非化石証書」で再エネ増えず
国内でも2019年から、経産省が「トラッキング付非化石証書」の実証事業を開始し、今後も継続的に運用していく方向です。
高瀬 日本の非化石価値証書に関しては、CDPとSBTでは、再エネと認めることになりましたが、RE100では、認定されませんでした。こうしたなかで、経産省が機敏に「トラッキング付非化石証書」の仕組みを立ち上げたことは大変に評価できます。
RE100では、今回、政府の構築したトラッキングシステムによって属性情報が付与されている非化石価値証書に限定して、利用可能としています。
CDPがトラッキングなしの非化石価値証書を認めたのは、それでもダブルカウントは防げると判断したからです。一方、RE100は、個別の再エネ開発を支援するという側面を重視するため、トラッキングによる発電電源の証明を必須としたのでしょう。
それでも、いまのところ国内の非化石価値取引市場は、盛り上がりを欠いています。
高瀬 非化石価値取引市場が低調なのは、まず、経産省が設定した最低価格1.3円/kWhが高すぎること。そして、RE100企業にとっては、仕組み上、新たな再エネの普及に貢献していないことが、購買意欲を削いでいます。
日本の非化石価値証書は、それまで埋没していたFIT再エネの環境価値を顕在化させ、その売却益で賦課金の国民負担を軽減する、という発想で導入されました。それはそれで意味がありますが、RE100は、企業の再エネ調達によって直接的に再エネを増やしていくことが理念のため、「賦課金の軽減」とはマッチしないのです。
例えば、RE100企業の米アップルは、再エネ調達の手法に関して、優先順位を設けています。まず、自社でプロジェクトを開発して直接保有する(図1)。それが難しい場合、長期再エネ購入契約で、同社のエネルギー調達基準に合う地域のプロジェクトを支援する。それも無理な場合、最近作られた再エネ設備からの証書を購入する、としています。