根強い「草と鎌の歴史」

草の状況によって、刈り取り作業を行っていくとすると、年間で雑草管理に使う費用(予算)が決まらないという課題があります。

緑地雑草科学研究所の伊藤幹二氏
緑地雑草科学研究所の伊藤幹二氏
(マイクロフォレスト リサーチ代表)

伊藤(幹) 「植生高30cm」を放置しないという基準は、場当たり的なものではありません。サイトによって事前調査を行い、毎年の雑草植生を観察していけば、ある程度、草の生長量を予想でき、作業計画を立てられるようになります。

 ちなみに、欧米先進国では、機械などによる「刈り取り」を採用する場合、以下の4つのポリシーを事前に設定して進めていくことが求められています。

 それは、(1)刈り取り場所の選定と優先順位の設定、(2)非刈り取り場所の設定、(3)非刈り取り場所の具体的な対策と優先順位の設定、そして、(4)期待される費用と要求される費用の時系列的な削減計画――です。

 欧米では、日本に比べ雑草防除の歴史が長く、除草剤やカバープランツなどを組み合わせた科学的な雑草管理が定着しています。防除できずに刈り取りを行う場合には範囲を明確に決め、非刈り取りエリアの管理をどうするのかをあらかじめ決めつつ、将来的には刈り取りエリアを減らしても適切に維持できるような管理手法が求められます。

国内のメガソーラーでは、むしろ除草剤の風評被害を恐れ、「手間はかかりますが、刈り取っています」という対応を、好ましいと考える面さえあります。

 日本では、先史時代から「草肥山」と呼ばれる、田畑の肥料に使う草を採取する場所が里山にたくさんあり、食糧生産を支えてきました。その広さは全国で1500万haだったとも言われます。草山から鎌で草を刈り取る作業は、たいへんな重労働だったはずです。

 戦後、GHQによって化学肥料が持ち込まれ、全国の草肥山は不要になりました。しかし、草と鎌の長い歴史から、日本社会では草を「刈り取る」ことに抵抗感がなく、刈り払い機という動力の登場で、かつてほどの重労働ではなくなりました。

 メガソーラーの運営・保守にも、こうした日本的な雑草管理が持ち込まれてしまった面があります。ただ、国内にも農業やゴルフ場のように除草剤を含めて科学的な雑草管理が構築され、広まっている分野もあります。メガソーラーについても、そうした知見を生かし、科学的で費用対効果に優れた雑草管理手法が確立されることが望まれます(関連記事:「刈り取り」で草が増えてしまうのはなぜ?緑地雑草科学研究所に聞く=第7回・後半)。

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