――世界的な活動という面で見ると、中国やインドの企業の参画が2社ずつと限られています。今後の動向を左右するアジアの大国に対して、どのように取り組みますか。
欧米で活動を始めたことが、現在の参画企業数の地域の偏在に現れています。しかし、RE100の参画企業は、本拠が欧米にある企業でも、製造などは中国やインドの拠点が担っているといった場合も少なくありません。
このため、インドや中国の現地企業が参画していなくても、例えば、アップルやグーグルなどの大企業の活動が、インドや中国の企業に大きな影響を及ぼしています。
RE100では、サプライチェーンを通じた活動を強制してはいませんが、部品や素材などのサプライヤーなどに対し、できるだけ再エネ起源の電気を使ってほしいと求めている企業もあります。例えば、アップルのサプライヤーは、再エネ電力を使うように要請されています(図2:アップルが語る「再エネ100%を実現するために、日本に望むこと」、太陽インキの関連ニュース、イビデンの関連インタビュー)。この中には、インドや中国の企業も含んでいます。
このような変化が起きていますので、参画企業数としては少ないかもしれませんが、実質的にRE100に関わっている企業は、インドや中国でも増えています。
既存の顧客が、再エネの活用を志向することで、自らの事業活動を再エネに転換することになったケースとして、デンマークの石油ガス天然ガス会社の例があります。
この会社は今後、石油やガスから脱却し、再エネ100%サプライヤーになることをコミットしました。顧客が再エネ電力の活用に取り組みことで、自ら再エネのサプライヤーになることを決断し、業態を転換しました。
――再エネ100%は、実現しやすい業種、しにくい業種があると思います。日本の経済界の中心は、鉄鋼や電力といった、比較的実現が難しい企業が担っています。
年間契約などで発電事業者から直接、あるいは市場で再エネ電気を購入すれば実現できる取り組みですので、IT(情報技術)であれ鉄鋼、自動車であれ、どの業種の企業でも考え方一つで実現できます。
ITや銀行などが先行しているように見える理由は、彼らが「再エネ100%」を勝機と捉え、ビジネス上や技術上の好機と考えて積極的に取り組んでいるからです(関連コラム:米銀行、初めて太陽光発電だけで「RE100」を達成)。
重厚長大と呼ばれる分野でも、参画している企業はあります。先ほど、インド企業の参画が少ないという指摘がありましたが、インドで参画している2社のうち1社はセメント会社、もう1社は自動車会社で、いずれも電力多消費型産業です。
本当は、重厚長大産業の企業の方が、再エネ100%に切り替える利点が大きいのです。
RE100参画企業である銀行の報告によると、RE100に参画したことによる効果の一つとして、電力関連の経費が30%減ったということです。もし、鉄鋼業の企業で電気代を30%節約できたら、金融とは規模の違う大きな効果が得られます。