茎を2本刈ると6本に再生

「刈り取り」によって、雑草の植生が変わっていくということですね。

緑地雑草科学研究所の伊藤操子氏
緑地雑草科学研究所の伊藤操子氏
(京都大学名誉教授)

伊藤(操) そうです。「刈り取り」を継続的に繰り返している管理地では、一年生の広葉雑草が衰退し、再生力のある地下茎型(ヨモギやセイタカアワダチソウなど)と、イネ科の叢生型雑草(オヒシバやエノコログサ類など)が多くなっていきます。

 このほかにも、オオバコ類やタンポポ類などの「ロゼット型」、シロツメクサやメヒシバ類などの「ほふく型」雑草も、刈り取り後にも芽が残り、再生して増えます(図1)。

図1●刈り取り継続地に適応して増える雑草の種類
図1●刈り取り継続地に適応して増える雑草の種類
(出所:緑地雑草科学研究所)
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 雑草は、茎葉の最も上に位置する芽(頂芽)が最も優勢で、草全体の成長を誘導します。刈り取りにより「頂芽」を失うと、休止していた他の芽にとってチャンスとなり、伸び始めます。こうした再生のメカニズムは一年生、多年生にかかわらず共通です。

ただ、雑草対策では、セイタカアワダチソウやヨモギなど、多年生雑草の繁茂が問題視されることが多いように感じます。

伊藤(操) セイタカアワダチソウやヨモギなど、地下茎型多年草は、地下部に多数の芽があるうえ、多量の栄養分を貯蔵しているので、刈り取り後の再生力が強く、地下で横方向にも拡がっていきます。

 例えば、ヨモギの地下部に関する研究調査では、数cmの地下茎断片から1シーズンで成長した地下茎の総伸長は24.7mに達し、これは地上部の約3倍の成長量(重量比)でした。つまり、地上部より地下部の草量の方が多く、たくさんの栄養分を蓄えているのです(図2)。

図2●地下茎型多年草の地下部の状態
図2●地下茎型多年草の地下部の状態
(出所:緑地雑草科学研究所)
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 また、刈り取りの影響調査では、地上の茎4本を刈り取ったことで茎9本が再生した例や、2本の茎を刈り取った結果、再生茎数が6本になった例を確認できました(図3)(図4)。

図3●再生して茎が増えたヨモギ。4本の刈り取り(赤線)で9本に増えた
図3●再生して茎が増えたヨモギ。4本の刈り取り(赤線)で9本に増えた
(出所:緑地雑草科学研究所)
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図4●2本の茎を刈り取り(赤線)、再生して6本に増えたヨモギ
図4●2本の茎を刈り取り(赤線)、再生して6本に増えたヨモギ
(出所:緑地雑草科学研究所)
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 刈り取りに対し、雑草がこのように反応する結果、草の密度(草量)が増し、生育期間が長引きます。再生により植物体が若返ることで、現存の個体自体が大きくなるのです。つまり、地下茎型多年草は、刈り取ることで、増えて広がっていくのです。