中国政府が今年6月に公表した太陽光発電に関する引き締め策が、世界の太陽光市場に波紋を投げかけている。この政策変更により、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設は停滞を余儀なくされ、太陽光関連市場の縮小は必至とされている。中国の太陽光発電市場に詳しい、東北大学・未来科学技術共同研究センタの特任教授で中国太陽光パネルメーカーの顧問も務める陳宗欣(Jack Chen)氏に、太陽光政策に関する中国政府の動きや影響などを解説してもらった。

大規模案件は「割り当て」中断

東北大学・特任教授の陳宗欣(Jack Chen)氏
東北大学・特任教授の陳宗欣(Jack Chen)氏

今年6月に公表された太陽光発電に関する中国政府の引き締め策は、具体的にはどのような内容の文書なのですか。

 ことの発端となったのは、中国の3つの省庁(中国国家発展改革委員会、財政部、国家エネルギー委員会)が6月1日に一般に公表した「太陽光発電に関する事項に関する通知書」という文書です。これは行政手続き上、5月31日に提出されたことから、「531ニューディール」または「ソーラーニューディール」とも呼ばれています。

 その主な内容は、次の5点です。(1)基本的に太陽光の買取価格や補助金を0.05元/kWh引き下げる。(2)今年の分散型太陽光を約10GWとする一方、大規模な地上設置型に関しては割り当てを一時中断する。(3)分散型太陽光発電は、5月31日以降の国庫補助金の対象には含まれず、地方自治体の法律によって支援される。(4)貧困を緩和する目的の太陽光発電所に関しては、買取価格を変更せずに維持する。(5)分散型太陽光発電所を含む通常の地上設置型発電所は、家庭用以外は競争力のあるコストで運用され、適正な価格の太陽光発電プロジェクトの開発と太陽光発電市場での取引を促進する。

日本から見ると、今回の引き締め策は唐突な印象を受けますが、この時期に中国政府が「531ニューディール」を出した背景には、何があるのですか

 中国の太陽光政策では、2020年にグリッドパリティに到達することを前提に、買取価格など補助金によって推進してきました。ただ、太陽光に対する補助金額はすでに2017年に850億ドルに達し、2020年には2000億ドルを超えることが予想されています。財政的にこれ以上の補助金増大を支えきれなくなったことがあります。

 加えて、すでに中国太陽光パネル産業は過剰設備の状態になっており、「531ニューディール」の公表前から、中国政府はこうした状況に手を打とうとしていました。実は、2018年4月には、国家エネルギー管理局長が、今年の太陽光発電の開発規模を管理する方向性を示していました。その意味では、事前に大きな政策変更のシグナルはあったのです。