2018年5月末に、中国の中央政府が太陽光発電設備の導入に関する政策の変更を公表した。世界最大の太陽光発電設置市場であることから、その影響に関心が集まっている(関連コラム:どうなる中国の太陽光市場!? 前半後半)。中でも、中国の発電設備メーカーへの影響が大きいと予想されている。中国の太陽光パネル大手であるトリナ・ソーラーの日本法人、トリナ・ソーラー・ジャパン(東京都港区)の陳曄(Chen Ye)社長に、その影響や対応などを聞いた。

――今回の政策変更について、どのように見ていますか。

トリナ・ソーラー・ジャパンの陳曄(Chen Ye)社長
トリナ・ソーラー・ジャパンの陳曄(Chen Ye)社長
(出所:日経BP)

 二つの理由によるものと感じています。一つは、太陽光発電設備が、想定されていたよりも速いペースで設置されたために、そのペースを少し抑えつつ、長期的に、安定して持続的な設置市場に変えたかった狙いを感じます。

 もう一つは、私見ですが、太陽光パネルやパワーコンディショナー(PCS)をはじめとする発電設備メーカーが、より望ましい方向に発展していく環境を守るためではないかと推察しています。

 中国には、たくさんの太陽光発電設備メーカーがあり、多結晶シリコンからウェーハ、太陽光パネル、PCSなどが、供給過剰になりがちな状況にあります。

 長期的に、より高品質な製品を開発し、生産し続けられるメーカーもあれば、その能力や意欲が持続しないと予想されたり、実力が十分ではないように見受けられるメーカーもあります。

 設備に関しても、生産効率の高い工場が多いメーカーもあれば、生産効率の低い工場を多く抱えるメーカーもあります。経営面でも、財務体質が健全で長期的に高い収益力を維持できそうなメーカーもあれば、相対的に財務体質が弱く、経営体力が脆弱に見えるメーカーもあります。

 こうした企業群が過当競争を続けた場合、すべてのメーカーが疲弊してしまう可能性もあります。今回の政策変更には、優れた製品を開発・生産し、経営面でも安定したメーカーを、現在の生産過剰の状況から守り、今後、より発展できる適正な環境を整備しようという意図を感じます。

 高効率ではない製品や開発力、工場、経営が多く見られるのは、中国内でティア3~4に位置づけられている中堅や下位のメーカーです。

 こうしたメーカーは、ほぼ中国向けのみに製品を販売していることから、今回の政策変更の影響をより強く受けるでしょう。経営体力に劣ることも多く、淘汰・集約される対象になるのではないかと見ています。企業や事業のM&A(合併・買収)も多く起きるのではないでしょうか。

 中国の場合、民間の金融機関はほとんどなく、ほぼ国営や国有です。国内市場のみに頼り、開発力や資金力に乏しく、非効率な経営を続けている企業が、頼みの国内市場の縮小で売り上げが落ち込み、資金が枯渇した結果、その命運は、国営や国有の金融機関の対応次第になります。その場合、中央政府の方針や意向が反映されやすくなります。