残りの年産6.5GWの生産設備が、中国にあります。このうち年産1GWの生産設備は、2010年以前に建てられ、すでに償却を終えています。このほか年産2GWの生産設備は、2015年以降に建設した新しいもので、PERC(passivated emitter and rear cell:裏面不動態式セル)型を製造するなど、すでに高効率な製品を製造しています。

 残りの年産3.5GWが、高効率な製品の製造といった面で、課題となっている設備です。2012~2015年に建てられた工場です。この工場は、2017年末から生産ラインの改造に着手していて、第1期、第2期にわけて2019年3月末までに完了する予定です。

 生産を続けながらラインを改造しており、集中的に大規模に改造する必要がある項目については、中国の春節(2月の旧正月)には例年、生産を止めているので、その期間に実施しました。その後も受注状況から時期を選んで、集中的に改造しながら生産しています。

 この年産3.5GWの生産設備は、改造後の生産品として、3分の1は「ブラックシリコン」、3分の2がPERCというように、高効率な製品を製造するラインに変わります。

 「ブラックシリコン」とは、セルのシリコンの表面を掘り込み、nmレベルの微細な突起を形成したものを呼びます。この構造によって、光の利用効率が高まり、セルの発電効率が上がります。

――こうした生産設備の改造や、政策変更に伴う6月以降の中国内の需要の減少などを考慮した、トリナ・ソーラーの2018年の出荷量は、どの程度になる予想でしょうか。

 その数値は、非公開です。ただし、5月までは好調です。下期は年内出荷分の受注獲得を強化するほか、トップランナープログラムについても2019年の入札を準備しています。

――トリナ・ソーラーでは、年産8.5GWという生産能力のほかに、OEM(相手先ブランド品製造)を積極的に活用しています。こうしたリスク管理は奏功しそうですか。

 創業者の高 紀凡(Jifan Gao)会長 兼 CEO(最高経営責任者)の方針で、ライトアセットと呼ぶ戦略を採っており、優秀な製造パートナーを組み込んで市場の拡大に対応する一環で、OEM生産を委託しています。

 ベトナムでは、年産1GWの生産能力を持っていますが、トリナ・ソーラーが直接投資したのはセル生産の1GWで、パネル生産はOEMを委託しています。

 また、自社のウェーハの生産能力は、年産8.5GWに比べると小さく、単結晶シリコンのウェーハのトップ企業であるロンジー、トンウェイとの3社による合弁企業が生産したウェーハを多く使っています。この合弁企業では、単結晶シリコンのインゴット、ウェーハを生産しています。

 このように、パートナー企業を取り込むことによって、すべてのサプライチェーンをコントロールしながら、生産能力を拡大してきています。

――中国の政策の変更後、トリナ・ソーラーが工場の一部の稼働を止め、従業員を解雇しているという報道がありました。これに関して、状況を教えてください。

 先ほど説明したように、生産設備の改造は、高効率な製品向けの改造に加えて、高効率な工場にする、つまり生産効率を高めるための改造も含んでいます。

トリナ・ソーラー・ジャパンの陳社長
トリナ・ソーラー・ジャパンの陳社長
(出所:日経BP)

 自動化・デジタル化を、より進める改造です。これによって工場内の従業員の活用の効率が上がり、余剰人員の規模がこれまでよりも少なくなります。それに対応して、人数を減らしました。従業員全体の中で、能力や意欲が一定の水準に達していない従業員も、この機会に辞めてもらいました。

 また、製造パートナー企業の中で、生産設備の更新や改造などに限界がある工場なども、この機会に調達を止めることにしました。

 一方で、新たに取り組んでいる分野、例えば、インターネットやAIを活用した「エネルギーIoT」の会社に変わっていくことを目指している中で、ITやAI、スマートエネルギーといった分野の従業員は増えています。研究開発も、従業員が増えている部門です。また、これらの分野への投資が増えています。

 ここ数年間のトリナ・ソーラーの従業員数は、ほぼ1万5000人前後で安定し、あまり大きく変わっていません。

 ただし、部門内では人数の増減があります。例えば、管理や資金調達関連の従業員が多かった時期から、現在のようにITやAI関連の従業員が増えつつあるといったように、トータルの人員は大きく変えない中で、会社の進化の段階によって、従業員の入れ替えは起きています。