今年7月、新しい「エネルギー基本計画」が閣議決定された。同計画は3年ごとの見直しだが、今回初めて「再生可能エネルギーの主力電源化」が盛り込まれた。ただ、前回の見直しの際に掲げたエネルギーミックス(望ましい電源構成)の比率を変更しなかったため、再エネに関しては、「主力電源化」と明記されたものの、22~24%というエネルギーミックスの目標値は据え置かれた形になった。経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長に、同計画を受けた今後の再エネ政策の方向性に関して聞いた。
「最大限」から「主力」に
新しい「エネルギー基本計画」では、再エネの「主力電源化」を初めて明記した一方、エネルギーミックスの目標値は据え置かれました。固定価格買取制度(FIT)の改正で入札制や運転開始期限が導入されるなど、再エネ導入に関して、「アクセルとブレーキを同時に踏んだようだ」との声も聞きます。

山崎 再エネの位置づけとして、エネルギー基本計画に「主力電源化」と明記したことは、たいへんに大きな意味を持ちます。これまで再エネに関しては、「いろいろな課題もあるなかで、最大限に導入する」という位置づけで、首相も経済産業大臣も、事務方もそうした言い方をしてきました。
今後は、「最大限」ではなく、「主力電源にすることを目指す」わけですから、こんな課題があるから、ここまでしか導入できない、というスタンスではなく、その障害をいかにして克服するのかが、エネルギー政策の大きな目的になります。この違いは大きいと思います。
これまで、「最大限に導入」と掲げていた時代にも、温暖化対策やエネルギーセキュリティの視点から、再エネの利点は認識されてきました。ここに来て、その重要性をさらに強調し、「主力電源」に格上げしたのはなぜですか。
山崎 もはや、再エネの「主力電源化」が世界的な潮流になっており、この流れは今後も変わらないとの判断があります。2016年に発効した国連の「パリ協定」により、温暖化対策を巡る動きは、従来の「低炭素化」を超え、「脱炭素化」を目指す方向になってきました。その実現に向け、省エネとともに、再エネへの期待が急速に高まっています。
こうしたなか、多くの国々が再エネを基幹電源と位置づけて支援しています。それが技術革新やコスト削減を促し、さらなる導入につながる、という好循環になっています。日本でもこうした流れを捉え、この分野のイノベーション競争にも加わる必要があります。
「主力電源化」と明記しつつも、エネルギーミックスでの再エネ比率(22~24%)を増やさず、目標値を据え置いたのはなぜですか。
山崎 「主力電源化」と明記した意義をまず強調しましたが、現時点で言えば、国内の再エネの実力は、「主力電源」としての条件を備えているとは言えません。具体的には、主力電源に求められる「コスト」と「長期安定電源」という2つの面で懸念があります。
課題に対しては、政府として対策を打っていきますが、現時点で克服への道筋が見えたわけではありません。そもそも前回のエネルギー基本計画で掲げた「22~24%」の達成もそう簡単ではないと思います。再エネの電源としての競争力が、現段階で明確に見定められないなか、さらに目標値を積む時期ではないと考えています。