FIT終了後の再投資に不安

10kW以上、50kW未満の事業用低圧案件は、強風でパネルが飛ばされたり、大雨で架台ごと崩壊したりした事件が報道されるなど、設計・施工の品質や、点検・保守が不十分との指摘があります。長期安定電源として不安があるのはこのサイズですか。

山崎 事業用低圧案件には、不安定な立地に施工したり、施工品質や点検・保守に不安にあるものがあるとの指摘があるのは確かです。そもそもこのサイズの野立て太陽光は、発電コストを削減してFITから自立していくという観点で、不利な領域です。

 FITからの自立を考える場合、事業的に最も有利なのが、自家消費型に移行することです。商用電力の電気料金単価(事業用なら10数円/kWh、住宅用なら20数円/kWh)が経済性の基準になるので、比較的、コストターゲットの達成は容易です。住宅用や事業ビルの屋根上、事業敷地内の太陽光などがこれに該当します。

経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
経済産業省 資源エネルギー庁 新エネルギー課の山崎琢矢課長
(撮影:清水盟貴)

 一方、需要施設がない野立て型の太陽光発電所は、FIT後は卸電力市場に売電することになります。この場合、その時点での卸市場価格によりますが、一般的に発電コストを10円/kWh以内に下げないと発電事業として採算が合わないでしょう。施工や運営コストの効率化を考えると大規模化した方が有利です。

 このためFIT後を考えた場合、太陽光は需要施設内に設置する自家消費型と、メガワット以上の大規模な野立て発電所に2極化する可能性が高く、実際にこうした傾向は発電コスト低下の進んだ海外でも顕在化しています。

 こうした視点で見ると、野立てタイプの事業用低圧案件は、自家消費に移行できない一方、規模的に小さく、事業的に厳しい領域になります。

事業用低圧案件のFIT後の事業性を考えると、買取期間終了後にパネルを張り替えてまで発電事業を継続しない可能性が高いということですか。

山崎 そもそも太陽光発電は燃料費がゼロのため、一度、建設して減価償却の済んだ設備の発電コストは大幅に下がります。効率的に運営・保守していけば、太陽光パネルやパワーコンディショナー(PCS)などを新品に交換しても、卸電力市場で競争力のある発電コストを達成できるはずです。

 FITなしで新規の野立て太陽光を建設し、卸電力市場で戦えることが、主力電源としての最終的なコスト目標ですが、まずはFITで設置した償却済み太陽光発電所に再投資して、さらに20年、30年と発電事業を続けることが重要で、それは、コスト的にはそれほど高いハードルではないと思います。

 ただ、事業用低圧案件に関しては、50kW前後の発電所が点々と立地しているなど、日常的な点検や保守など運営面での効率化に限界もあり、相対的に事業性が低くなる可能性があります。FIT後に、パネルやPCSに再投資してまで発電事業を続けようと考える発電所オーナーがどれほどいるのか、たいへん気がかりな点です。

 そして、日本では、太陽光の認定容量の約3割、件数ベースでは95%が、事業用低圧案件になっています。一度、エネルギーミックスの目標を達成しても、3割もの発電設備が次々と発電事業から撤退するような事態もあり得るのです(図2)。

図2●事業用太陽光発電の事業規模
図2●事業用太陽光発電の事業規模
注:2017年12月末現在(出所:経済産業省)
[画像のクリックで拡大表示]