「秋の七草」が強害雑草に

緑地雑草科学研究所の伊藤操子・理事
緑地雑草科学研究所の伊藤操子・理事

野立ての太陽光発電所の多くでは、フェンスの外側からツルが巻き付いて敷地内まで侵入してくる「クズ」に頭を悩ませています。いま、市街地の空き地や線路脇などで頻繁にみられるクズは、「秋の七草」の1つである「葛(くず)」と同じものなのですか。

伊藤(操) 大型の強害雑草として問題になっているクズは「秋の七草」の「葛」と同じものです。獰猛なまでに大繁茂している現在、その面影はありませんが、昔から日本人にとって身近な野草で、かつては、有用植物として里山などで盛んに栽培されました。根は「葛粉(くずこ)」、ツルは「葛布(くずふ)」として利用されてきました。

 葛粉は、クズの根から取れ、日本ではドングリなどに代わる良質なデンプン源だったほか、葛根湯など、薬の原料にも使われています。葛布は、クズのツルの内皮を織ったもので、静岡県掛川市の「掛川手織葛布」が有名で、一時は海外にも輸出されていました。いまでも数社ですが、生産している企業があります。

 日本の農家は、平たんな土地は稲作や畑として開発した一方で、周辺の山は肥料のための草、薪の採取場のために管理し、そうした山野で副業的にクズやワラビ、広葉樹などを育て、食用や燃料に利用してきました。

かつての有用植物が、なぜ、厄介な有害植物になってしまったのですか。

伊藤(幹) 日本では、戦後、化学肥料の導入とエネルギー革命で、肥料採取のための草肥山と薪炭林が不要になり、里山は放置されたり、スギ・ヒノキが植林されたりしました。この時から、従来、里山で栽培されていた作物・クズが「雑草」になってしまいました。

 葛粉のデンプンは、小麦やジャガイモで代替できますし、葛布も木綿の普及にしたがって、経済的にそれほど高い価値を生む作物ではなくなっていた面もあります。

 加えて、高度成長期のインフラ整備の際、里山から採取した土が法面や埋め立て地の客土に使われました。それに伴い里山に生息していたクズが、市街地や道路脇などに広まりました。造成地や法面で、クズの繁茂をよく見かけるのは、こうした背景があります。

 クズは、日本ばかりでなく、海外でも有害雑草に指定する国が多く、特に米国では日本から持ち込まれて急激に繁殖し、「グリーンモンスター」とも呼ばれ、法的に厳しくその管理や対策を管理しています(図1)。

図1●メガソーラーのフェンスに巻き付いたクズ(出所:日経BP)
図1●メガソーラーのフェンスに巻き付いたクズ(出所:日経BP)
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