里山から客土に交じって市街地に

これほど侵略的に増えるのは、植物学的にどんな特徴によるのですか。

伊藤(操) クズは、多年生のマメ科植物で、花や実を付けますが、種子による繁殖力は弱く、茎や根で増える「栄養繁殖」が主体です(図2)(図3)。このことからも、ここまで広まったのは、かつて里山で適度に分布していたものが、大規模造成に伴う土の移動によって繁殖域が拡大した可能性が高いのです。

図2●クズの花(出所:緑地雑草科学研究所)
図2●クズの花(出所:緑地雑草科学研究所)
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図3●クズの実(出所:緑地雑草科学研究所)
図3●クズの実(出所:緑地雑草科学研究所)
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 「マメ科の王様」とも言われ、根粒菌により空中窒素同化を行います。ただ、都市部などでは、窒素酸化物やばい煙などエアロゾルが多く、クズは大きな葉でそれらを吸収して窒素やリンを利用できるので、あえて窒素固定は行っていないようです。市街地でクズの成長が早いのは、こうした豊富な栄養塩類を活用できることが背景にありそうです。

 加えて、地球温暖化も成長を促進させています。クズは植物のなかでも、二酸化炭素濃度に敏感に反応するとの研究があります。温暖化で冬が短くなったことに加え、二酸化炭素濃度が高まっていることも、成長スピードを速めている可能性があります。

 クズの植物体の構成は、3枚セットになる複葉のほか、多年生の茎と当年生の茎(新茎・ツル)、主根(根塊)と節根からなります。多年生の茎には所々に「節」があり、節から毎年、新茎と節根が出ます(図4)。主根を地表から見ると根の塊のように見えるので、この部分を「株」「株元」ということもあります。

図4●クズ個体の基本構造(出所:緑地雑草科学研究所)
図4●クズ個体の基本構造(出所:緑地雑草科学研究所)
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