季節により遮光率を変える

――国内のソーラーシェアリングでは、一般的に「遮光率30%」(透光率70%)が、作物の収量減を2割以内に抑えるめどとされています。東北大学でのフィールド実験では、どんな結果になりましたか。

安岡 やはり、「遮光率30%」がめどになります。ただ、農作物の性質を緻密に評価していくことで、営農と発電事業の双方に、より利点のある手法が分かってきました。

 東北地方で牧草を栽培する場合、牧草の生育にとって日光が最も必要なのは、4月半ばから5月の芽生えの時期で、1日でいうと午前から午後3時頃までが重要になります。逆に言うと、春先に作物優先で透光率を高めておけば、それ以外の時期や午後3時以降には、日光をかなり減らしても、生育にほとんど影響しないことが分かってきました。

――最も発電量の多い4~5月に大きく発電量を減らしても、発電事業の収益性は確保できますか。

安岡 確かに、春に発電量が減ることは痛いことですが、その分を他の時期でカバーできると考えています。そのために、可動式の架台を採用し、4~5月は作物への日射を優先してパネルの向きを制御し、牧草にとっても暑過ぎる夏場には発電を優先して太陽を追尾し、遮光率を上げます。そうすれば作物の収量を維持しつつ、年間を通じてみれば、発電量を最大化できます。

――ソーラーシェアリングの事業化はいつごろになりますか。

安岡 今後、さらに2サイトでの実証事業を計画しています。今年中に約50kWのテストファーム、来年の夏に約1MW規模のパイロットファームを宮城県内に稼働させます。いずれも可動式架台を導入します。実証といっても、系統連系して21円/kWhで売電します。耕作機械の活用など実際の運用面に考慮したノウハウを蓄積します。