竹を燃やすバイオマス発電の事業化
――竹を燃料に使うバイオマス発電所も事業化しました。

当初、構想していた再エネ事業は、太陽光と風力発電だけでした。竹を燃料に使うバイオマス発電は、藤崎電機が阿南市を本拠としていることが起点となりました。
阿南は、タケノコの産地として知られている地域です。しかし、近年は阿南のタケノコ産業が衰退しつつあります。
この影響で、林が放置され、荒れ始めています。この地域の問題の解消になればと、地域の未利用竹林で刈った竹を応用して技術や事業・製品を開発するバンブーケミカル研究所(阿南市)を、約7年前に合弁で設立しました。
この後、FITが施行され、このような竹林の竹を、バイオマス発電の燃料に使えないだろうかと考え始めました。人の手が入ることで、竹林が荒れることを抑制できます。竹は、伸びるのが早く、サスティナブルな燃料となり得ます。
ただし、問題がありました。竹の燃焼に対応できるバイオマス発電設備が存在しなかったことです。竹は、カリウムを多く含むために、燃焼を続けることで発電設備が傷んでしまいます。
竹を燃料に使えるバイオマス発電設備を開発する必要がありました。日本のメーカーと開発したかったのですが、協力を得られませんでした。そこで、バイオマス発電の実績が豊富なドイツでメーカーを探し、最終的にランビォン・エナジー・ソリューションズ(Lambion Energy Solutions)と共同開発しました。
共同開発した発電設備は、山口県山陽小野田市の出力1.99MWのバイオマス発電所に導入します(関連ニュース)。
藤崎電機は、この発電設備のアジアにおける販売権も持っており、今後、拡販できたらと考えています。
阿南が発端となった事業ですが、最初の発電所は、山口県に建設することになりました。山口県出身の藤崎稔・創業者に推薦されたことがきっかけでしたが、山口県の熱意が強かっただけでなく、日本で唯一、竹の伐採・チップ化・燃焼までの実証経験があったこと(林野庁の委託事業)、竹の供給体制を確立しやすいといった条件が整っていたことが決め手となりました。
竹をバイオマス発電の燃料に使うことで、他にも二つの大きな課題がありました。
一つは、竹はFITのバイオマス発電の認定対象となる「木材」なのか、という点です。もう一つは、ドイツの会社が製造した発電設備のため、JIS(日本工業規格)の規格に準拠していないことでした。時間を要しましたが、両方とも解決できました。
今回の竹によるバイオマス発電所では、出力1.99MWの発電設備に対して、1日に約80tの竹を使います。この量の竹を20年間、地産地消で賄って、地域に複合的な利点をもたらす発電所を目指しています。
竹を燃料に使うバイオマス発電は今後、阿南市でより大規模に展開する計画です。合計出力10MWといった規模で構想しています。