3DCADを使い2週間で造成設計

――FITの買取価格は24円/kWhまで下がり、2017年度はさらに21~22円/kWhに下がるとの予想もあります。買取価格の低下にどこまで付いていけますか。

シャープ・エネルギーソリューション事業本部 稲田周次副事業本部長
シャープ・エネルギーソリューション事業本部 稲田周次副事業本部長
(出所:日経BP)

稲田 EPC事業者の立場からは、「20円/kWhでも建設したい」という顧客がいれば、ぜひやりたいと思っています。そのために工事費用を下げる方法を研究しています。シャープはタイでメガソーラー事業を展開していますが、同国では12~13円/kWhというFIT価格で頑張っています。世界的に見ると20円/kWhでもかなり高い水準です。

 もちろん、日本とタイなど途上国では、人件費に違いがあります。では、ドイツなど欧州はどうでしょう。人件費が日本と同程度でも10円台/kWh前半で発電所を建設しています。日本ではいますぐにここまで下げろ、と言われても難しいですが、こうした方向性にもっていくべきと思います。

――工事費の削減に向けた具体的な試みはありますか。

稲田 今後のメガソーラー開発では、林地開発などに伴い、多方位の傾斜面を造成し、太陽光パネルを設置することが増えていきます。平らに造成するのが理想ですが、20円台/kWhの買取価格では、造成規模を最小限に抑えた「地なり」設置が基本になります。

 こうした案件に対応し、3D(3次元)CADによるシステム設計の高速化と精度向上を実現するソフトウエアを導入しました。これは、「土木造成設計」→「アレイ配置」→「自動配線設計」という流れの3つのパッケージから構成されます。

 山や谷のある土地を適切に造成設計し、切土と盛土の量から費用を試算するには、一般的な設計事務所に頼むと、概ね3カ月かかってしまいます。導入した3DCADソフトを使うと、2週間程度で造成設計の方針を決め、概算費用を出せます。

 次にこの造成設計を元に、アレイ(パネルの設置単位)配置をデザインし、地形や影などを考慮して発電量を試算します。こうして設計したアレイ配置を前提にパワーコンディショナー(PCS)の位置や配線ルートなどを図面から自動で拾い出して決めます。