リサイクル率90%のファースト・ソーラー
――太陽光発電で先行した欧米の方が、回収やリサイクルについても、先行しているようですね。ファースト・ソーラーは、セル(発電素子)の材料としてカドミウムテルル(CdTe)を使っている以上、メーカー責任として使用済みパネルの回収が重要と指摘されています。
ファースト・ソーラーの場合、すでにCdTeを含む材料のリサイクル体制を確立し、米国、マレーシアにあるパネル工場内、ドイツにあるパネル工場跡地に、リサイクル施設を備え、そこで処理しています。
現在、ベトナムのパネル工場でも、リサイクル施設の整備を進めているほか、新たに確立した技術を順次導入してリサイクル技術全体の革新を続けているとのことでした。
太陽光パネルの製造、出荷、回収、リサイクルまでを、工場で一貫して担う体制が採られています。
驚いたのは、リサイクル率が現時点で90%に達しているという点です。これは、現時点では、使用済みパネルのガラスについては販売し、瓶などの製造に使われており、他の用途向けに使うことを含んだ率となっていますが、将来はガラスも同社が製造する太陽光パネルの材料として再び使うことを構想しています。
CdTeについては、リサイクルプロセスを確立し、すでに新たなパネルの材料として使っているとのことでした。精錬してきちんとカドミウム(Cd)とテルル(Te)をわけ、再び製造ラインに投入できる材料に戻しているようです。
リサイクルの理想は、ガラス瓶で実現している姿です。使えなくなるまで洗ってリユース(再使用)し、使えなくなった時点で、新しい瓶の材料として利用し、いわゆる水平リサイクルである「瓶 to 瓶」で回し続けることです。新品を作る際に、できるだけ新たな材料を使うことなく製造できれば、資源を極力減らさずに、モノ作りが回ります。
こうした水平リサイクルは、ガラス応用製品では、瓶以外には実現していないのが実態です。太陽光パネルと似たような、他の材料を積層したガラス応用製品では、自動車でも、液晶パネルでも、その他の分野でも難しいのが現状です。
このような状況の中、ファースト・ソーラーが、ガラスに薄膜セルなどを積層した太陽光パネルという、水平リサイクルの難易度が高い製品にもかかわらず、現時点でリサイクル率90%を実現しているというのは、評価すべきと感じます。
ガラスについても、現時点では実現できていませんが、新たに製造するパネルの材料として使う方針をもち、そのための技術開発も、かなりのレベルに達していることが伺えました。
「自動車 to 自動車」、「液晶パネル to 液晶パネル」のリサイクルも実現できていない現状で、それより早く、「太陽光パネルto 太陽光パネル」に近づいているように感じました。
日本において、回収した地域から都道府県を越えて移動し、処理することは制度上、簡単ではありません。広域でどのように処理するのかは、今後の課題となっています。
ファースト・ソーラーが日本国内で同じようなリサイクルを実現しようとした場合、ガラス再資源化協議会のネットワークを活用できる可能性も出てくるかもしれません。
ヴェオリアグループでは、マルセイユにある結晶シリコン型の太陽光パネルのリサイクル施設を訪問しました。
新しく稼働したリサイクル施設に、結晶シリコン型パネルが大量に集まっていました。アルミフレームを外してから、運搬用のカセットに乗せると、自動で分別処理ラインに搬入され、ガラスやセル、金属、その他に分離されていました。
欧州では、これまでもさまざまな太陽光パネルの回収・リサイクルを広域的に取り組んできました。しかし、どれも世界的な標準の地位を占めるまでには至っていませんでした。その中で、ヴェオリアのような大手が、独自のプロセスを確立し、大規模に事業を展開し始めた場合、それが標準となる可能性があります。
このように、欧米では太陽光パネルのリサイクルが、意識の面でも技術面でも当たり前になりつつあることを目の当たりにすると、彼我の差に危機感がさらに強くなりました。