年内にガイドラインを修正
――日本における太陽光パネルの回収・リサイクルは、直近の課題と将来的な備えという二つの課題を、走りながら模索している状況に見えます。
その通りの状況です。直近の課題では、被災・損傷した太陽光パネルの回収とリサイクルへの対策で、進捗が見られます。
現時点で、まとまった数量の回収やリサイクルの必要性が出てくるのは、大地震や台風、大雨などによって被災した太陽光発電所や住宅などに設置されていたパネルです。こうした被災パネルの回収とリサイクルの状況を総務省が調べた結果、適切に処理されていないケースが見つかり、環境省と経済産業省(経産省)に勧告しました。
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勧告を受けて、両省は共管で「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」の修正に向けた準備を進めています。わたしもそのワーキンググループに委員として加わっており、年内にガイドラインが修正される予定です。
――ガイドラインの修正は、どのような点が中心になるのでしょうか。
おもに二つあります。一つは、被災して損傷した太陽光パネルの発電を、確実に止めることです。パネル上をブルーシートで覆うなど、確実に遮光して発電を止める措置を求めます。
もう一つは、被災パネルをリサイクル、または適正に最終処分する際に必要な、パネルに関する情報の開示に関することです。中でも、パネルが含んでいる有害な化学物質に関する情報の開示や伝達の方法を示します。
総務省による勧告でも、有害物質の含有に関する情報が得られず、適切に処理できなかった複数の例が示されています。産業廃棄物処理業者が有価物として引き取った損壊パネルから、基準値以上のセレンの溶出が検出された例もありました(図1)。
処理事業者にとって、有害物質に関する情報を得られないまま、仕方がなく手探りで処理したところ、こうした結果となったことで、「太陽光パネルの最終処分は、リスクが高い」という認識が広まり、引き受けを断る処理事業者まで出てくるようになりました。
この状況もあって、太陽光発電協会(JPEA)は、国内メーカーを中心に含有成分に関する情報開示を促し、すでに一部のメーカーは開示し始めています。
ガイドラインの修正では、情報提供が排出者の義務であることを明記した上、太陽光パネルメーカーを含む関係者ごとの情報提供内容と伝達手法を明示する予定で、より適切に情報が得られる環境に変わることを期待しています。
また、JPEAが8月に、使用済みパネルの適正処理が可能な産業廃棄物中間処理会社の一覧表を公表しました(関連ニュース)。
この一覧の作成において、ガラス再資源化協議会は、会員企業や関係の深い企業・団体(図2)に働き掛け、適正処理が可能な会社として手を挙げてもらいました。一覧表に掲載された企業のうち、約8割を協議会の会員企業が占めています。
さらに、7月の西日本豪雨に際し、中国の大手太陽光パネルメーカーであるトリナ・ソーラーが、被災した自社製太陽光パネルの廃棄処分について、自らリサイクル処理を受け付けると発表したことを高く評価しています(関連ニュース)。
一方、経産省では、太陽光発電設備の放置や不法投棄、廃棄への対策として、費用の外部積み立てやその報告の義務化、さらに、売電収入の一部を源泉徴収し、第三者が積み立てる方式の導入を検討しています(関連ニュース:再エネ設備の廃棄費用、報告を義務化、経産省が通知、太陽光廃棄費用、源泉徴収方式「外部積み立て」に、経産省が方向性)。
以前から、太陽光発電設備に対しても、自動車と同じように処分費用をプール方式で積み立てることを提言してきました。その方向に進みつつあることは、適切な回収・リサイクルを実現する環境を整える上で、望ましいことだと感じています(図3)。