自動車や液晶パネルの現状と太陽光パネル

――太陽光パネルに似ている構造の製品分野に、活用できる技術や知見があれば、効率的にリサイクル手法を確立できそうです。どのような分野が該当しそうでしょうか。

 自動車と液晶パネルです。いずれも、ガラスに何らかの膜を重ねている点で共通しています。自動車の場合は、銀をガラス上に印刷したり、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂を2枚のガラス間に挟み込むといった構造です。液晶パネルは、2枚のガラスに半導体や導電体、カラーフィルタなどがそれぞれ薄膜で形成されています。

 しかし、残念ながら、自動車、液晶パネルともに、水平リサイクルを実現できていません。いずれも、実験室レベルでは、確実に分離して回収できる技術を実証できていますが、その技術を産業レベルで使いこなすには、コスト面で折り合わないのです。

 ガラス応用製品のリサイクルを実現する際にまず重要なのは、ガラスの種類と特徴を把握することです。これまで、主に手がけてきたのは14分野、ガラスの種類としては12種類です(図4)。

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図4●分野別のガラスの特徴
図4●分野別のガラスの特徴
(出所:ガラス再資源化協議会)
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 太陽光パネルのガラスの特徴は、不純物が混じっておらず、ガラスそのものはリサイクルに向いていることです。パネルのガラスは、できるだけ太陽光を多く透過させ、セルの発電量を最大化することが望ましいために、不純物が入っていません。

 太陽光パネルに使われているガラスは、主に2種類です。ソーダ石灰ガラスとアルミノホウ珪酸ガラスです。ソーダ石灰ガラスは、瓶のほか、建材や自動車、ガラス繊維でも使われています。アルミノホウ珪酸ガラスは、液晶パネルでも使われます。

 2種類ありますが、現状の製品で実際に使われているのは、ほぼソーダ石灰ガラスです。アルミノホウ珪酸ガラスは、薄膜系の一部のみに使われています。

 ただ、将来は増えてくるかもしれません。例えば、高層ビルの窓ガラスが太陽光発電機能を持つような、いわゆるBIPV(建材一体型の太陽光パネル)が普及してきた場合、窓の役割も兼ねる太陽光パネルは、結晶シリコン型ではなく、ほぼ薄膜系になると予想されます。この時に、アルミノホウ珪酸ガラスが多く使われている可能性は、頭に入れておかなくてはなりません。

 用途別、ガラスの種類別にガラス応用製品を回収することが、リサイクルにとって重要になります。

 異なるガラスの種類や用途の製品を混ぜてリサイクルした場合、元の製品の製造に使う水平リサイクルが難しくなってくるためです。元の製品の製造に適さないリサイクルとなった場合、別の製品の製造に使うことになりますが、この場合、再利用先の市場規模によってはリサイクルの需要と供給が合わなくなる可能性があります。