ガラス応用製品のリサイクル技術としては、分離や中間処理、運搬、原料加工といった技術が重要になります(図5)。これらに関連する異分野、異業種の企業が関わってガラスの再資源化のサプライチェーンを構築するためのプロジェクトを環境省から6年間にわたって受託し、現在も進行中です。

図5●GReATプロジェクトには幅広い企業が参画
図5●GReATプロジェクトには幅広い企業が参画
(出所:ガラス再資源化協議会)
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 「GReAT(Glass Recycling Advanced Technology)」プロジェクトと呼ばれ、この中で、太陽光パネル関連にも取り組みました。

 ガラスは、板状のまま他の膜を分離でき、リサイクルできれば理想です。新しい太陽光パネルの製造にも使いやすいでしょう。ただし、現実には、バックシートと一体になったセルなどを分離する際に、どうしても機械的な荷重がかかり、粉砕した状態でリサイクルが始まる場合がほとんどです。

 粉砕したガラスは、カレットと呼ばれるガラス屑となります。そこから、ガラスの状態によって、太陽光パネルのカバーガラスのような元の製品で使えるガラスに戻せるのか、板ガラスやガラス繊維、セラミックといった他の用途に使用するのかが決まります(図6)。

図6●太陽光パネルのリサイクルプロセス
図6●太陽光パネルのリサイクルプロセス
(出所:ガラス再資源化協議会)
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 元のカバーガラスに使えるガラスに戻す技術も大事ですが、そこでは使えない場合の次の用途として、われわれが期待しているのは、セラミックへの活用です。これは、セラミックが国内で年60万tと使用量が多い市場のためです。できるだけ数量の大きな市場を出口として持っていることが重要です。

 太陽光パネルからガラスを分離する技術として、GReATでは主に4つの技術に取り組んできました(図7)。圧縮粉砕(ブラスト手法による圧縮粉砕の関連ニュース)、シュレッダーによる粉砕、せん断加工、ホットナイフによる分離です(新たな封止剤分離技術の関連コラム)。

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図7●太陽光パネルのリサイクル向けに開発された技術の一部
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図7●太陽光パネルのリサイクル向けに開発された技術の一部
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図7●太陽光パネルのリサイクル向けに開発された技術の一部
(出所:ガラス再資源化協議会)

 この中のどの方法が適するのかは、リサイクル事業者によって変わります。その企業が従来から使っている装置や得意とする技術は、それぞれ異なるためです。自社に適した方法を選び、よりリサイクル率を高められるように工夫していくことが競争となります。

 リサイクル事業者には、太陽光パネルという新たな分野で、いち早くリサイクル率の高い方法を実現し、需要を取り込みたいという意欲があります。最近では、リサイクル分野の大手が相次いで参入してきています。

 あるべき姿からは、まだ遠い状態ですが、国内のガラスに関わるさまざまな分野の関係者の知見を集め、解決策を模索していくことで、太陽光パネルに最適なリサイクルを実現できるはずです。

■変更履歴
公開当初、ファースト・ソーラーのリサイクルに関する記述に誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2018/12/25 10:45]