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 災害医療の現場で災害カルテシステムは本当に使えるのか――。災害時の救命救急活動を支援する電子トリアージシステムの開発は多く試みられ、訓練でのテスト運用も行われている。一方、災害診療記録の電子化、システム化は進んでいないし、訓練で運用した報告も見かけない。

 救命救急センターでER経過記録システムを構築・運用している国立病院機構 大阪医療センターは、同システムをベースに電子災害医療診療記録システムを構築。熊本地震に派遣された災害派遣医療チーム(DMAT)が、初めて実際の災害医療現場で運用を試みた。

大阪医療センターDMATらの熊本地震での活動風景(大阪医療センター救命救急センターブログより)
大阪医療センターDMATらの熊本地震での活動風景(大阪医療センター救命救急センターブログより)
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 大阪医療センターが電子化した災害医療診療記録の記載項目は、日本救急医学会が2015年6月に公開した「災害診療記録」に基づいている(日本救急医学会の災害診療記録報告書の案内)。同診療記録は、災害時における標準的な診療記録をつくることを目的に、日本救急医学会、日本診療情報管理学会、日本病院会、日本医師会、日本集団災害医学会の5団体で検討・作成したもの。作成の背景には、災害派遣された医療班で利用する診療録の様式や運用ルールの不統一により、医療班同士の診療の引き継ぎや、診療録から医療情報が抽出できずリアルタイムな対応に支障をきたした東日本大震災の教訓がある。

 災害診療記録には、一般診療用と医療搬送が必要な患者の初期外傷診療に用いる外傷用の2種類がある。一般診療用(A3サイズ用紙2つ折り)に、必要に応じて外傷用(A4サイズ用紙・裏表)を挟み込んで運用する。患者の氏名・性別・年齢(生年月日)、症状または診断、医師の署名など基本8項目に加え、緊急度・重症度が一目でわかるようにする、感染症アラート情報、保険診療情報などを記載する。また、紙媒体におけるメディカルID(患者ID)として、生年月日(西暦8桁)+性別(MまたはF)+姓名(カタカナで7桁)の16桁を定めている。

救命救急センター診療部長の定光氏
救命救急センター診療部長の定光氏

 大阪医療センター 救命救急センター診療部長の定光大海氏は、標準化された災害診療記録の意義を次のように説明する。「国内の災害時で標準的な診療記録として作られたもので、熊本地震から一部で利用され始め、今後標準的に使われていく。災害時に最初に記載されるトリアージタグの情報を引き継げる診療録の形式であり、SCU(広域搬送拠点臨時医療施設)や拠点病院の救護所などで使用され、DMATの医療搬送カルテにつながるもの。また、災害時の疫学的なデータ集積のためのツールにもなっていく」。