「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律」、いわゆる次世代医療基盤法が2018年5月11日に施行された。医療機関などが提供した患者の医療情報が匿名加工され、大学などの研究機関や企業が、治療効果や評価などに関する大規模な研究、創薬、新たな医療機器開発などに活用できるようになる(関連記事)。
同法は2017年4月28日に国会で可決・成立しており、今回いよいよ施行となった(関連記事)。大規模な医療情報の収集と利活用の仕組みの確立を目指す法律であるため、医療ビッグデータ法とも呼ばれている。
2017年5月30日に施行された改正個人情報保護法により、病歴などを含む患者の医療情報は要配慮個人情報に指定され、いわゆるオプトアウトによる第三者提供が禁止された。そのため、患者の同意取得や匿名化など医療情報収集のためコスト負担が大きくなり、医療ビッグデータとして活用することは事実上、不可能になった。そこで次世代医療基盤法では、利用目的によって患者の個別同意を取得することなく第三者提供を可能にし、研究開発などに利用できるようにした。
患者の意志は初診時に確認
同法では、患者本人が拒否しなければ同意したとみなされ、患者情報が第三者提供できる。ただし、情報提供するかどうかは医療機関の任意となる。
施行後は、最初の受診時に医師や看護師が書面で説明する手続きが必要になる。患者が16歳未満の場合、あるいは自身で判断できない状態の場合は、保護者らにも説明する必要がある。また、情報の提供までに30日間程度の期間を設けて患者が拒否できる機会を担保し、いつでも情報提供の停止を求める処置も講じられている。
制度構築の検討過程では、第三者提供に関する周知として医療機関内の見やすい場所に掲示するといった案もあった。しかし、患者が知らないうちに提供される懸念があるため、前述のように患者との対面で書面をもって説明することとなった。