PR

 コンビニで買い物をしていると突然、自分を軽蔑し、嘲笑し、命令してくる幻聴が聞こえてくる――。段ボール製のVR(仮想現実)ビューワーの向こうには、そんな世界が広がっていた。

「ハコスコ」でのぞき見る
「ハコスコ」でのぞき見る
[画像のクリックで拡大表示]

 統合失調症は、その症状や治療法についての社会的理解が広がっていない疾患の一つだ。医療機関を受診している国内患者数は2014年時点で約77万人と、精神疾患の中ではうつ病(約112万人)に次いで多い。患者自身に病識がないケースも多く、未受診の患者を含めるとその数は100万人規模に達すると推定されている。

 統合失調症の症状には大きく、幻覚や妄想などの「陽性症状」、意欲低下などの「陰性症状」、周囲の状況に臨機応変に対応しにくくなる「認知機能障害」がある。治療法は、急性期には陽性症状を抑える薬物療法が中心。慢性期には心理療法などを組み合わせていく。

 発症年齢の大半は10~30歳代で、入院などによって就業できず、社会から離れた生活を余儀なくされている患者が少なくない。国内の精神病床の入院患者数(2014年時点で約29万人)では、その50%以上を統合失調症患者が占める。精神疾患がもたらす非就業による損失は、うつ病で約5000億円、不安障害で約7000億円と試算されるのに対し、統合失調症では2兆円近くと推定されている。

 一方で、統合失調症は適切な治療によって十分に社会復帰を目指せる疾患である。にもかかわらず、疾患に対する理解の不足やそれに伴う偏見が社会復帰の妨げとなったり、適切なケアが行われなかったりする要因となっている。こうした状況を、どう打開すべきか。