分野を越えた支援の場に
発表会に登壇した、慶応義塾大学医学部長でLINK-Jの理事長を務める岡野栄之氏は、日本では基礎研究が実用化につながりにくいことを指摘。論文数を国際的に比較してみると、基礎研究では日本はトップクラスであるにも関わらず、実用化に向けた臨床研究では後塵を拝しているという。こうした状況を打開する上では、「分野を越えて人と人との交流を増やすために、研究から開発までに寄り添うような、イノベーションの創出を推進する場やソフトが重要になる」(同氏)。LINK-Jの設立に込めたのは、そんな思いだ。岡野氏は、自身の再生医療研究の経験から、医学研究とテクノロジーの融合により、新しい治療法が確立されると話した。例えば「再生医療技術とロボット技術の融合で、機能再生治療を実現しようとしている」(同氏)。同氏らのグループは2016年4月、「ロボットスーツHAL」で知られるCYBERDYNEと「医療イノベーション推進に関する連携協定」を締結している(関連記事)。
LINK-Jでは、京都大学 iPS細胞研究所 所長の山中伸弥氏をはじめとする、ライフサイエンスの豊富な知見を持つ13人がアドバイザーとして運営諮問委員会を構成する。同委員会には、テルモ 取締役顧問の中尾浩治氏や、日立製作所 代表執行役 執行役社長の東原敏昭氏なども名を連ねる。京都大学の山中氏は今回の取り組みに、次のようなコメントを寄せた。「一見、実用化から程遠い基礎研究も、脈々と続く研究の先に社会に貢献する可能性を秘めている。(LINK-Jが)実用化のイノベーションの推進役になることを大いに期待している」。