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足りている物資が山のように届く

 稲田氏は震災直後から、民間による生活支援ボランティア「チーム熊本」に携わった。県内外のボランティア約2200人を受け入れ、国内外から約1100トンの物資を受け入れた大掛かりな活動だ。約2000回にわたる物資提供や100件以上のがれき撤去、1万食近くの炊き出しなども行った。

 こうした現場で同氏が実感したのは「専門の(支援スキルを持った)人が多く集まってさばかなけば、とてもさばけない」ほどの作業量。ところがボランティアの現場には「“素人”が毎日来る」。大半が短期滞在者のためスキルの教育は難しく、ITリテラシーも参加者によるばらつきが大きい。

 稲田氏らは現場での“分業”を徹底することで、これらの課題を克服しようと努めた。例えば物資配送では、担当者を「データ処理班」と「搬送班」に2分。各班の作業フローのどこを担当するかに応じて「着信班」「PC班」「判断班」といったさらに細かい役割に分けた。支援の申し出や要請の電話についても、その対応をフロー化した。

 情報共有には「SNSをすごく活用した」と稲田氏は話す。ただし、一筋縄ではいかなかった。SNSのメッセージが「きちんと読まれなかったり、(既に要件が)終わったことがシェアされたりする」(同氏)ことが、被災地では大きな問題を招くからだ。例えば「山盛りに積まれた物資が、2トントラックでさらに届く」(同氏)といったように、物資が過剰に届く事態をしばしば招いた。

 そこで稲田氏らは、ボランティアの各窓口の電話番号をSNSに掲載し、支援の申し出や要請を電話で伝えてもらうようにした。こうした「アナログな情報をデジタルに載せる」(稲田氏)やり方が被災地では役に立った。この経験から、デジタルとアナログの両方を活用した“人×情報のマッチングの仕組み”が被災地支援のポイントの1つだと同氏は指摘する。